台湾×東村山・小平・東大和|文化・食・歴史を巡る旅
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礼と音楽で人を育てた教育の原点とは
台湾・台南の中心部に建つ台南孔子廟(たいなんこうしびょう)。一見すると歴史ある寺院のように見えますが、実はここ、台湾最初の学校とも呼ばれる場所です。1665年に創建されたこの孔子廟は、台湾最古の孔子廟であると同時に、台湾における公的教育の出発点として知られています。

台南孔子廟
台南孔子廟が建立されたのは1665年。明鄭時代、鄭成功の子・鄭経に仕えた政治家、陳永華が創建を主導したと伝えられています。創建当初、この場所には孔子を祀る「聖廟」だけでなく、明倫堂(講学施設)も併設されていました。
そのため現在も台南孔子廟は「全台首學(台湾最初の学び舎)」の名で親しまれています。
館内には、清朝歴代皇帝から下賜された巨大な御匾(ぎょへん/扁額)が並びます。
歴代皇帝たちが孔子廟へ扁額を贈ってきました。
そこに記された言葉は、
「万世の師の模範」
孔子は永遠の教師である
「人類史上、孔子ほどの聖人はいない」
孔子の神格化を示す
「天地と並ぶ存在」
孔子思想の宇宙的権威化
「古今の聖賢を集大成した存在」
「天が与えた聖人」
「文明・文化の根源はここにある」
など。当時の儒教は、国家統治の理念そのものでした。孔子廟は、国家が理想とする人間像を示す教育空間でもあったのです。

楽器
今回の取材で特に印象的だったのが、館内に展示されていた数多くの古代祭礼楽器です。
これらは祭孔儀礼に用いられる楽器であり、儒教における「礼楽(れいがく)」思想を象徴しています。
展示解説によれば、それぞれの楽器には意味が与えられていました。
これらは、音を鳴らす道具ではなく、人の心を整え、徳を育てるための教育装置として扱われていました。
儒教では、
とされます。知識だけを詰め込むのではなく、振る舞いと感情の両面を整えてこそ教育という考え方です。
台南孔子廟は、人としてどう生きるかまで教える教育空間だったと言えるでしょう。

孔子廟の奥にある崇聖祠(すうせいし)では、孔子本人だけでなく、その父祖五代が祀られています。これは、学ぶ者は祖先を敬い、家族を重んじるべきという儒教思想を表しています。学問とは単なる知識ではなく、
への責任を伴うもの、という価値観がここにも息づいていました。
台南孔子廟を歩いて感じたのは、教育とは学校だけで完結するものではありません。
そのすべてと結びついています。これは、地域の公民館活動、音楽祭、市民講座、地域イベントなど、地域全体で人を育てる北多摩の文化にも通じる考え方ではないでしょうか。
時代も国も違いますが、「学びは地域の文化の中で育まれる」という本質は、今も変わっていないのかもしれません。
台湾に約10年間在住し、現地で生活・仕事を経験。
現在はまいぷれ東村山・小平・東大和 編集部として、北多摩と台湾をつなぐ視点から、歴史・文化・地域の魅力を取材・発信している。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。