台湾×東村山・小平・東大和|文化・食・歴史を巡る旅
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賑わう墓地に驚いた「掃墓(そうぼ)」とは?
台湾の春、街を歩いていると、山の斜面に広がる墓地へ向かう多くの家族連れの姿を見かけます。日本人の感覚では、墓参りといえば静かで厳かなもの。しかし台湾では、親族が大勢集まり、墓前で談笑し、ときに食事まで。
この行事は「掃墓(sǎomù/サオムー)」。
日本のお彼岸やお盆にも通じる先祖を想う文化ですが、その意味合いや雰囲気には大きな違いがありました。今回は、台湾南部の現地で見た「掃墓」の風景を通して、台湾に根付く祖先祭祀と家族文化についてご紹介します。

香炉
掃墓は、祖先の墓を掃除し、供物や線香を供えて祀る行事です。現在の台湾では、一般的に「清明節」前後に行われる春の墓参り行事として知られています。
掃墓の時期は旧暦の「清明」に合わせ旧暦3月3日前後に行われています。日本では新暦中心の生活が一般的ですが、台湾では旧暦に基づく年中行事が暮らしの中に生きていることも、日本との大きな違いのひとつです。
現地で印象的だったのは、その賑やかさでした。墓地には多くの車が並び、親族一同で墓掃除をし、供物を並べ、線香をあげる。子どもたちも参加し、墓前で会話が弾み、食事を囲む家族も少なくありません。
日本人から見ると少し驚くかもしれませんが、台湾では掃墓は単なる供養ではなく、「一族が集まる日」としての意味合いが非常に強いそうです。

お供物と先祖に送るあの世で使うお金
台湾の掃墓文化の背景には、道教・民間信仰・仏教などが混ざり合った祖先祭祀文化があります。その根底には、「親を敬い、祖先を大切にする」という東アジア共通の価値観が色濃く残っており、祖先は今も子孫を見守る存在として捉えられています。
そのため、
こと自体が、家の歴史やルーツを次世代に伝える意味も持っています。

墓の状態が子孫の運勢に関わるという考え方も
掃墓の時期、台湾では潤餅という料理もよく食べられます。薄い皮で野菜や肉を巻いた、台湾風の生春巻きのような料理です。これは中国古来の寒食節(火を使わない日)の名残とされ、古い節気文化が現代の食習慣として残っている例の一つとされています。宗教行事と食文化が結びついている点も、台湾文化の面白さを感じる部分です。

家族で入るお墓
一方で、台湾でも近年は変化が進んでいます。
都市化や少子化により、
など、伝統的な掃墓の形は少しずつ変わりつつあります。それでもなお、「家族で祖先を敬う」という文化の核は、今も台湾社会に深く根付いています。
日本のお彼岸やお盆も、形は違えど「先祖を想い、家族が集まる」文化です。台湾の掃墓を見て感じたのは、方法は違っても、その根底にある想いは共通しているということでした。一方で、その賑やかな雰囲気は、日本本土の墓参りというよりも、親族が墓前に集まり食事を囲む沖縄の清明祭(シーミー)に近いものも感じさせます。
同じ日本国内でも地域によって先祖供養の形が異なるように、台湾の掃墓もまた、東アジアに広がる多様な祖先祭祀文化の一つなのでしょう。自分たちのルーツを大切にし、家族のつながりを確かめる。その営みは、国や地域が違っても、今なお人々の暮らしの中に息づいています。
台湾に約10年間在住し、現地で生活・仕事を経験。
現在はまいぷれ東村山・小平・東大和 編集部として、北多摩と台湾をつなぐ視点から、歴史・文化・地域の魅力を取材・発信しています。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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