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第17回「歌とは自己理解と自己実現」ソプラノ・松浦わか奈さんが歩み続ける音楽人生

更新)

音楽と向き合い続けることで、自分自身を知っていく。【こいねこ】

幼い頃から音楽に囲まれて育ち、数々の舞台やイタリア留学を経験してきたソプラノ歌手・松浦わか奈さん。華やかな舞台の裏側で、日々積み重ねてきた努力と、歌を通して自分自身と向き合い続ける時間がありました。

 

「歌とは自己理解と自己実現です。」

 

その言葉には、これまで歩んできた人生そのものが込められていました。

音楽が当たり前にある家庭で育つ

 

松浦さんのおかあさまはピアノ講師。3歳からバイオリン、6歳からピアノを始め、幼い頃から音楽が身近にある環境で育ちました。ショパンの《幻想即興曲》が特に好きで、「胎内で聴いていたのかもしれません」と笑います。

 

歌謡曲や映画音楽、ドラマのBGMなど幅広い音楽に親しみ、今振り返ると久石譲さんの作品からも大きな影響を受けていたといいます。

 

音楽は特別な習い事ではなく、生活の一部でした。

演じる楽しさが、声楽への道を開いた

 

もともとはピアノ科への進学も真剣に考えていました。しかし先生から「声楽科ならピアノも続けられる」という助言を受け、声楽の道を選びます。その決め手になったのは、オペラでした。

 

「シャイな性格なんですが、役を演じながら歌うことがとても楽しかったんです。普段とは違う自分になれる。その面白さを初めて知りました。」

 

歌うだけではなく、一人の人物として物語を生きる。その魅力に惹かれ、本格的に声楽へ進みました。

ソプラノの魅力について尋ねると、「プリマドンナを演じられること。そして高い声で繊細な表現ができることです」と話します。

初めて「歌う意味」を問い直したコロナ禍

 

学生時代のコンクール、イタリア留学、多くの舞台経験。これまでさまざまな壁を乗り越えてきましたが、一番苦しかったのはコロナ禍だったそうです。

 

歌は身体そのものが楽器。

 

息を使うことへの恐怖や、先の見えない不安の中で、

  • 「歌を続けていいのだろうか」
  • 「人としてどうあるべきなのか」

と何度も考えたといいます。

  • 「もう終わりでいいですよ、と肩をたたかれたような気持ちにもなりました。」

 

それでも毎日の練習だけはやめられませんでした。

 

「歯を磨くのと同じような感覚でした。」

 

コロナ禍で時間ができたことで、庭園や歴史ある街並みを歩く機会が増えました。自然の美しさや新しい出会いに触れ、少しずつ初心を取り戻していきます。

 

「自分も音楽を通して、人の心に届く演奏をしていきたい。」

 

その想いを改めて胸に刻んだ時間でもありました。

知れば知るほど、深くなる音楽

 

「クラシックやオペラは難しいと思われがちですが、私は知れば知るほど面白くなるものだと思っています。」

 

そう話す松浦さん。

 

「噛めば噛むほど美味しくなる。煮込んだスープみたいなものなんです。」

 

歌う時に最も大切にしているのは、作曲家や物語が伝えようとしていることを丁寧に受け止めること。感情や言葉を自分の中で理解し、それを聴く人へ届けることを心がけています。外国語で歌う作品も、言葉と旋律が一体となっているからこそ、その国ならではの響きや感情まで伝わると感じています。


 

音楽ユニット【こいねこ】

地域で歌うからこそ生まれる時間

 

ホールで歌う舞台とは違い、高齢者施設や地域イベントでは、お客様の表情や反応をすぐ近くで感じることができます。

 

「その場で生まれる空気や、お客様の感情を受け取りながら歌えることが魅力です。」

 

現在は音楽ユニット「こいねこ」のメンバーとしても活動し、地域のコンサートやイベントにも出演しています。オペラだけではなく、懐かしい歌や親しみやすい曲も届けながら、多くの人に音楽の楽しさを伝えています。

音楽ユニット【こいねこ】

「歌とは自己理解と自己実現」

 

最後に、「歌とはどんな存在ですか」と尋ねました。松浦さんは少し考え、ゆっくりと言葉を選びながら答えてくれました。

 

「歌とは自己理解と自己実現です。歌を学んでいると、自分でも知らなかった自分に気づくことがあります。時には厳しく、時には優しく包み込んでくれる存在です。一生かけて自分自身を磨き、その歩みや経験を音に乗せて、誰かの心に響く音楽を届けていきたいと思っています。」

 

取材の最後、

 

「修行僧みたいな感じなんですね?」

 

とお聞きすると、松浦さんは少し考えて笑顔で答えてくださいました。

 

「修行僧じゃなくて、職人ですね。」

 

一つひとつの音を積み重ね、自分自身と向き合い続ける。その姿勢こそが、松浦さんの音楽の原点なのだと感じました。

編集後記 取材・文:陳書涵

 

松浦さんのお話を伺っていて印象に残ったのは、「歌が好き」という言葉以上に、「歌を通して自分と向き合う」という姿勢でした。

 

コロナ禍では音楽を続ける意味に悩み、それでも毎日の練習だけはやめなかった。その積み重ねがあったからこそ、「歌とは自己理解と自己実現」という言葉が自然に生まれたのだと思います。

 

取材の最後に笑いながら話してくれた「修行僧じゃなくて職人ですね」という一言も、とても印象的でした。派手さよりも積み重ねを大切にし、一つひとつの音を丁寧に磨いていく。その誠実な姿勢が、松浦さんの歌の魅力につながっているのだと感じた取材でした。

こいねこ

地域向け音楽イベントの企画と実施・音楽教室

クラシック×民謡、癒しのこいねこサウンド。

小平市上水新町1丁目17-18

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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