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第13回:【小平市】チェロと津軽民謡を奏でる、こいねこ・りえさんの音楽人生

更新)

「父の音を受け継ぎ、チェロと津軽民謡で地域に音楽を届ける」

「始めた」という記憶がない——。

 

音楽一家の三女として生まれ、家中のあちこちから音楽が聞こえる環境で育った、こいねこのチェリスト・りえさん。チェロ奏者だった父の音を受け継ぎながら、津軽民謡という日本文化への誇りも胸に活動を続けています。

 

今回のアーティスト特集では、
チェロとの出会い、父との絆、津軽民謡への想い、そして地域で音楽を届ける意味について伺いました。

「始めた記憶がない」ほど自然だった、音楽のある日常

 

「始めたという記憶も感覚もないんです。」

 

そう語るりえさんは、音楽一家の三女として育ちました。お稽古場からはチェロ、姉の部屋からは三味線、居間からはピアノ。家中のどこにいても音楽が聞こえる。そんな環境が、りえさんにとっての“当たり前”だったそうです。

 

「最初に触れた楽器が何かも、実はよく分からないんです。」

 

音楽は、習い事ではなく生活そのものだったと言います。

「チェロは父の音そのものだった」

 

りえさんがチェロを選んだ理由には、お父様の存在があります。父は、大阪フィルハーモニー交響楽団のチェリスト。幼い頃から、父のチェロの音を聴いて育ちました。

 

「私にとってチェロは、父の音そのものです。」

 

父の死後、深い悲しみの中で再びチェロを弾き始めたというりえさん。「チェロを弾いて癒され、励まされ、その死を何とか乗り越えることができました。」一度は音楽から離れた時期もありました。

しかし父の存在が、もう一度、音楽へ向き合うきっかけになったと言います。

それまで音楽は“そこにあるもの”だった。

けれどその時初めて、「自分の意思で音楽と向き合った」と話します。


 

高校時代のアメリカ留学で気づいた“音楽の力”

 

高校時代、アメリカ留学中の出来事も印象に残っているそうです。合唱クラスに入りたいと希望したものの、そのクラスは高レベルで試験が必要でした。内容は、先生がピアノで弾いた音を歌い返すだけ。どんなに長く続いても歌い返すりえさんを見て、先生は驚きながらも最後には大笑い。そのままクラスへ迎え入れられました。

 

「そこで初めて、西洋音楽での発声や発音を本格的に学びました。楽しかったですね。」

 

言葉を超えて伝わる音楽の力を、改めて実感した経験だったそうです。


 

津軽民謡は“出会った”のではなく、生まれた時からあった

 

チェロと並ぶ、りえさんのもう一つの音楽の柱。

それが津軽民謡です。

 

「これも“出会い”という記憶はなく、生まれた時からそこにありました。」

 

りえさんが生まれた頃、お父様は青森で津軽三味線奏者・指導者として活躍。つまり、チェロも民謡も、どちらも“父の音”だったのです。近年、改めて三味線を弾くようになった背景には、お父様の存在があります。父が出演したテレビやラジオを見返した時、日本文化への誇りと愛情、そして失われつつあることへの憂いを感じたといいます。

 

「日本にも素晴らしい音楽があるという確固たるものを、自分の中に持てている。」

 

それこそが、父から受け継いだ最大の遺産だと語ります。そして今、その文化を次世代へ繋げたいと強く願っています。

「クラシックと民謡は全然違う。だからこそ面白い」

 

津軽民謡の魅力について伺うと、りえさんはこう話します。

 

「クラシックで“良い”とされることが、民謡ではむしろダメなこともあるんです。」

 

発音、声の出し方、リズム。

どれも西洋音楽とは大きく異なるそうです。

 

「ウィーンに行けばワルツ、日本に来れば津軽民謡。」

 

世界には多様な音楽文化があり、違うからこそ面白い。津軽民謡もまた、その豊かな音楽文化を構成する大切な存在だと語ります。

 

 

地域で演奏するからこそ届く音楽がある

 

高齢者施設や地域イベントでの演奏について伺うと、りえさんは優しく微笑みながら話してくれました。

 

「普段外出が難しい方に、少し違う時間を届けられるのが光栄なんです。」

 

高齢者施設では、満面の笑顔で真剣に耳を傾けてくれる方々の姿に、むしろ演奏する側が癒されることもあるそうです。地域イベントでは、普段音楽に触れる機会の少ない方が足を止めてくれることも。

 

「“意外に良かった”“楽しかった”と思ってもらえたら、それが一番嬉しいですね。」

 

ホールでは味わえない、近距離ならではの魅力もあります。

 

「近くで聴いていただくと、チェロの振動まで感じてもらえることがあるんです。」

 

それは、地域演奏ならではの特別な体験かもしれません。

こいねこの魅力は「何でもありな自由さ」


こいねこに参加したきっかけは、友人からの一本の声掛け。

 

「面白い人を紹介したいから、楽器を持ってきて。」

 

そう言われてチェロを背負い、公民館のホールへ向かったのが始まりでした。その場で演奏し、「一緒にやろう」と声をかけられ、メンバーに。こいねこの魅力について聞くと、りえさんは笑いながらこう話します。

 

「何でもありな自由さですね。」

 

そして、メンバーへの言葉も印象的でした。

 

「みんな、本当に優しいんです。」

 

長年音楽の世界を見てきた中で、競争や批判ではなく、互いを応援し合う関係性に驚いたといいます。

こいねことっしーさん(バリトン歌手:荒井俊匡)については、「行動力も歌声も存在感も大きい。一瞬で人を魅了する天性の人たらし」というコメントも。

 

そして、メンバー一人ひとりについて伺うと、温かな言葉が続きました。

 

「こいねこの柱」ゆかりん(ピアニスト:森下柚香)

 

「ゆかりんはムードメーカーで、いつも場を明るくしてくれる存在。でも実は、とんでもない実力の持ち主なんです。」ちょっとしたキーシフトもその場で自然にこなし、歌やチェロの伴奏も快く引き受けてくれる。

 

「こいねこの柱です。ゆかりんがピアノを弾き始めると、一瞬でヨーロッパの空気が漂うんですよね。」

 

その表現からも、りえさんの深い信頼が伝わってきます。

 

謙虚で実はしっかり者、わかりん(ソプラノ歌手:松浦わか奈)

 

わかりんについては、「とても謙虚で少しシャイ。でも、それがまた魅力的なんです。」と笑顔で話します。一方で、歌い始めると圧倒的な高音域で聴く人を驚かせる存在でもあるそう。「とっしーと二人で歌う時には、ちゃんと優しくたしなめてくれる、実はしっかり者なんです。」

「父が残してくれたものを、次の世代へ」

 

今後挑戦したいことは、チェロと三味線の両方を届けていくこと。

 

「チェロだけでは、まだ半分の私しか見せられていない気がするんです。」

 

最後に、「音楽とは何か」を伺うと、少し考えた後、こう答えてくれました。

 

「最大の癒しであり、最大の悲しみでもあります。」

 

限界を突きつけられる存在。それでも、もう音楽のない人生は歩まない。

 

「父が残してくれた意志を引き継ぎ、父が遺してくれた王子様達(チェロ)にお仕えしていく。それが私の使命です。」

 

音楽を通して、父から受け継いだものを次世代へ。りえさんの演奏には、そんな深い物語が込められていました。

こいねこ

地域向け音楽イベントの企画と実施・音楽教室

クラシック×民謡、癒しのこいねこサウンド。

小平市上水新町1丁目17-18

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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