暮らしと仕事の「?」を調べてみた
(更新)
科学誌『Nature』が2026年9月1日に掲載したニュースを参考にしました。
暮らしと仕事の「?」を調べてみた身近な疑問を、一次情報から読み解く。
生成AIは、少しずつ私たちの身近な道具になっています。では、多くの人が同じようにAIを使うようになったら、どうなるのでしょう。
その先には、「考え方まで似てくる」ということもあるのでしょうか。今回は、そんな疑問を調べてみました。
※この記事は2026年9月6日時点で確認できた研究・資料をもとにしています。

きっかけは、科学誌『Nature』が2026年9月1日に掲載したニュース特集です。
タイトルは、
日本語版では「AIは私たちの思考を似通わせるのか」と紹介されています。記事では、生成AIによって文章やアイデア、文化、さらには人の判断などが似通っていく可能性について、複数の研究が紹介されています。
ただし、ここで一つ注意があります。
このNatureの記事は、複数の研究を紹介・解説した「ニュース特集」です。そこで今回は、Natureの記事だけで判断せず、そこで紹介されている元の研究まで確認してみることにしました。
興味深い研究があります。2024年に『Science Advances』に掲載された、Anil R. Doshi氏とOliver P. Hauser氏による研究です。
研究では、293人の参加者に8文程度の短い物語を書いてもらいました。
参加者は無作為に、
という3つの条件に分けられました。完成した作品は、別に集められた600人の評価者が評価しました。
すると、AIのアイデアを利用できた人の作品は、AIなしの場合に比べて「新規性」や「有用性」などの評価が高くなりました。
特に、もともとの創造性が低いと測定された人ほど、AIの助けによる改善が大きく表れました。つまり、この研究だけを見ると、AIは人間の創造性を奪うどころか、創作を助けることがある
という結果です。
この研究には、もう一つ重要な結果があります。AIを利用して作られた物語は、作品同士がより似ていました。
一人ひとりを見ると、AIを使ったことで作品の評価が上がる。ところが、みんなの作品をまとめて見ると、似た方向に集まりやすくなる。
研究者らは、この結果を、
としています。
2025年に『Nature Human Behaviour』に掲載された分析では、ChatGPTを使ったアイデア出しについても検討されています。
元になった実験では、プレゼントのアイデアを考えたり、身近な物から玩具を考えたり、家庭用品の別の使い道を考えたりする課題が行われていました。
ChatGPTを利用した参加者は、平均すると創造性の高いアイデアを出していました。ところが、それらを「みんなで出したアイデアの集合」として分析すると、ChatGPTを使った回答は多様性が低くなっていました。
ここでも、
という結果が見えてきます。
さらに2026年、『PNAS Nexus』に掲載された研究では、22種類の大規模言語モデル(LLM)と102人の人間を、3種類の創造性課題で比較しています。
その一つは、身近な物について「普通とは違う使い方」を考えるような課題です。研究では、LLMが出したアイデアは、人間よりやや独創的と評価される面がありました。
しかし、別の特徴もありました。
研究者らは、現在のLLMを創造的なパートナーとして利用する場合、どのモデルを使ったとしても、利用者を似た創作結果へ導く可能性があると指摘しています。
もちろん、これはAI単独の回答を比較した研究です。人間が自分の経験や知識を加えながらAIと共同作業した場合に、必ず同じ結果になると示したものではありません。
2026年8月には、さらに大規模な研究が『Nature Human Behaviour』に掲載されました。南カリフォルニア大学などの研究チームが調べたのは、7つのデータセットに含まれる88万件を超える文章です。
研究チームは、SNS、ニュース、科学分野など異なる領域の文章を分析しました。
その結果、ChatGPT公開後、LLMの利用が広がった時期とともに、文章表現のばらつきが小さくなる傾向が確認されました。
ただし、この部分には注意が必要です。ChatGPT公開前後の文章を比べただけでは、
「AIが原因で文章が似た」
と完全に証明することはできません。同じ時期に社会や文章の書き方が変化した可能性もあるからです。
そこで研究チームは、別の実験も行っています。
人間が書いた文章をLLMに渡し、文章を改善・書き直させました。すると、文章の中心的な内容はおおむね維持されていた一方、文章のスタイルは似る方向へ変化しました。
文章の複雑さの「ばらつき」は、使用するデータやモデルによって21~50%縮小したと報告されています。
つまり、
という現象が確認されたのです。
ここまで読むと、
「やっぱりAIを使うと、人間の考えまで同じになるんだ」
と思うかもしれません。
しかし、今回確認した研究から、そこまで断定することはできません。研究で比較されているのは主に、
などの「出力」です。頭の中にある人間の考え方そのものが同じになったことを証明したわけではありません。
この3つは、分けて考える必要があります。
今回確認した研究からは、少なくとも次のことが分かりました。生成AIは、個人の創作やアイデアを助けることがある。特に、創作を苦手としていた人を助ける効果が大きく表れた研究があります。
その一方で、
多くの人がAIを利用したとき、出来上がった文章やアイデアが互いに似やすくなる現象も複数の研究で報告されています。
さらに、大規模な文章分析とLLMによる書き直し実験でも、文章表現のばらつきが縮小する結果が確認されています。
これは、遠い世界の研究だけの話でもなさそうです。
例えば地域のお店でも、
とAIに相談することができます。とても便利です。
文章を書くことが苦手だった人でも、短時間で読みやすい文章を作れるようになるかもしれません。今回確認した研究にも、そうした「底上げ」の可能性を示す結果があります。
一方で、地域のお店がみんな似たAIに、
とお願いしたらどうでしょう。一店一店には違う歴史があり、店主の性格があり、お客さんとの関係があります。
それなのに、出来上がった文章だけを見ると、どこか似た雰囲気になってしまう。今回の研究を地域の情報発信にそのまま当てはめることはできませんが、考えておきたい点ではあります。
これは他人事ではありません。まいぷれ東村山・小平・東大和編集部でも、情報整理や構成の検討などにAIを利用することがあります。
便利だからこそ、AIが最初に出した「それらしい答え」を、そのまま編集部の答えにしない。これは意識しておく必要がありそうです。
例えば、お店の記事を書くのであれば、AIだけでは知ることのできない、
そうした情報が、その店にしかない記事を作る材料になります。AIを使わないことよりも、AIにはない材料を人間が持ち込むことが重要なのかもしれません。
これは今回の研究が直接証明した結論ではなく、研究結果を踏まえた編集部としての考えです。
今回調べた限り、その結論にもなりません。むしろ研究では、AIを利用することで一人ひとりの成果が良くなった例が確認されています。
問題は「AIを使うか、使わないか」ではなく、AIから一つ答えが出てきたときに、
と、もう一度考えてみる。AIの答えを完成品ではなく、考え始めるための材料として使う。
そんな使い方なら、便利さを生かしながら、自分らしい考えや表現を残せると考えています。
今回の「?」は、「AIを使うと、みんな同じことを考えるようになる?」でした。
調べてみると、「みんな同じことを考えるようになる」とまでは確認できませんでした。
一方で、AIが一人ひとりの創造性や文章作成を助けながら、集団全体では文章やアイデアを似た方向へ近づけることがあるという研究結果は複数確認できました。
便利になることと、多様であること。
この二つは必ずしも同じ方向には進まないようです。
AIに何を任せて、どこに自分自身の経験や考えを加えるのか。
生成AIが身近になった今、私たち自身も少し意識してみてよい「?」なのかもしれません。
https://www.nature.com/articles/d41586-026-02682-3
https://www. https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adn5290.org/doi/10.1126/sciadv.adn5290
https://www.nature.com/articles/s41562-025-02173-x
https://academic.oup.com/pnasnexus/article/5/3/pgag042/8529001
https://www.nature.com/articles/s41562-026-02550-0
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