まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部
口の動き、光による通知、バーチャル手話案内人。聴覚障害のある当事者とともに、情報の伝わり方を考える展示
台湾の今を、日本へ。
まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部でございます。当事業部では、台湾の企業・商品・文化を日本へご紹介するとともに、地域や企業の皆さまをつなぐ相談窓口として活動しております。
連載「台湾の今」では、現地で起きている新しい動きを取り上げ、その背景にある仕組みや、日本の地域・事業者にもつながる視点とともにご紹介してまいります。
今回は、台湾南部の台南市で開催されている、聴覚障害と情報アクセシビリティをテーマにした体験型展示をご紹介します。
台南市政府社会局は、2026年10月24日から11月3日まで、「聽見寂靜 聽障多元倡議展」を開催しています。
日本語では「静寂を聴く――聴覚障害の多様性を考える展示」といった意味になります。
この展示で注目したいのは、聴覚障害のある当事者自身が企画に関わり、日常生活で直面する情報の壁を、来場者とともに考える場をつくっていることです。
「聞こえないこと」だけが問題なのではない
私たちの日常生活には、音声によって伝えられる情報が数多くあります。
駅や公共施設のアナウンス、病院の呼び出し、飲食店での注文、行政窓口での説明などです。
これらは聞こえる人にとっては当たり前の情報ですが、聴覚障害のある人にとっては、十分に届かない場合があります。
重要なのは、情報を受け取れない原因を、個人の聴力だけに求めないことです。
例えば、病院の呼び出しが音声だけで行われていれば、聞こえにくい人は自分の順番が来たことに気づけない可能性があります。
一方、番号表示や振動による通知などが用意されていれば、音声を聞き取れなくても情報を受け取れます。
つまり、同じ人でも、情報を伝える環境によって、利用できるサービスが変わるということです。
今回の展示は、こうした情報の伝わり方について考える機会となっています。
口の動きを読む、光で情報を受け取る――体験を通じて考える
展示では、来場者が音声以外の方法で情報を受け取る体験が用意されています。
その一つが、口の動きから言葉を読み取る体験です。
相手の口元を見れば、話している内容がすべて分かると思われることもありますが、実際には口の形が似ている言葉も多く、口の動きだけで正確に理解することは容易ではありません。
また、光によって情報を知らせる方法や、必要な情報が十分に届かない状況を再現する展示も設けられています。
こうした体験を通じて、普段は意識しにくい情報伝達の仕組みに目を向けることができます。
ただし、短時間の体験だけで、聴覚障害のある人の生活や経験をすべて理解できるわけではありません。
バーチャル手話案内人やスマートグラスも紹介
今回の展示では、情報アクセシビリティを支援する技術も紹介されています。
その一つが、バーチャル手話案内人です。
また、スマートグラスなどの技術も取り上げられています。
こうした技術は、音声以外の方法で情報を伝える可能性を広げるものです。
一方で、技術を導入すれば、すべての問題が解決するわけではありません。
例えば、手話を主なコミュニケーション手段とする人もいれば、文字による情報提供を希望する人、補聴器や人工内耳を利用する人もいます。
聴覚障害の程度や、使いやすいコミュニケーション方法は一人ひとり異なります。
また、自動音声認識や機械による手話表現には、正確性や対応範囲などの課題もあります。
重要なのは、特定の技術を導入すること自体ではなく、利用する人が必要な情報を確実に受け取れるかどうかです。
台南市には約1万1,200人の聴覚障害者
台南市政府によると、2026年9月末時点で、市内には聴覚障害者として把握されている人が約1万1,200人います。
ただし、この数字は行政が把握している人数であり、聞こえにくさを感じているすべての人を表すものではありません。
また、聴覚障害のある人々の間でも、生活環境やコミュニケーション方法は異なります。
今回の展示では、そうした多様性を伝えることも重視されています。
支援される人から、社会を変える提案者へ
今回の取り組みで特に注目したいのは、聴覚障害のある当事者が展示の企画に関わっていることです。
障害者に関する展示や啓発活動は、ともすると支援する側が内容を決め、当事者を紹介する構成になりがちです。
しかし、実際に情報の壁を経験している人が企画に関わることで、外部からは気づきにくい課題や、必要とされる改善策を伝える機会が生まれます。
台南市は今回の展示を通じて、障害のある人を支援の受け手としてだけでなく、文化の創作者や社会課題の提案者として位置づけています。
これは、情報アクセシビリティを考えるうえでも重要な視点です。
何が不便なのかを周囲が一方的に判断するのではなく、当事者自身が課題を示し、改善に関わること。
その参加の仕組みも、今回の展示の特徴といえるでしょう。
日本の地域店舗や公共施設でも考えたいこと
こうした取り組みは、日本の地域社会にも関係しています。
例えば、飲食店で注文を受けるとき、音声でのやり取りだけでなく、メニューの指差しや筆談でも対応できるでしょうか。
病院や公共施設では、呼び出しや緊急時の案内が音声だけになっていないでしょうか。
店舗の営業時間変更や臨時休業の案内も、電話でしか確認できない場合、聞こえにくい人にとっては利用しづらいことがあります。
特別な機器を導入しなくても、文字による案内、視覚的な表示、複数の問い合わせ方法を用意するなど、改善できることはあります。
東村山市・小平市・東大和市の地域店舗や公共施設でも、情報がどのように伝わっているかを見直すきっかけになるのではないでしょうか。
まとめ――情報のバリアフリーは、伝える側からも考えられる
台南市で開催されている「聽見寂靜 聽障多元倡議展」は、聴覚障害を単に聞こえ方の問題として捉えるのではなく、情報をどのように伝え、誰もが受け取れるようにするかを考える展示です。
口の動きや光を使った体験、情報支援技術の紹介、そして当事者自身の企画への参加。
これらを通じて、情報のバリアフリーを身近な課題として考える機会を提供しています。
必要なのは、すべての人に同じ方法で情報を伝えることではなく、それぞれの人が利用できる方法を用意することです。
まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部では、今後も台湾で進む社会的な取り組みや、地域の暮らしを支える仕組みについて、日本の皆さまにご紹介してまいります。
参考資料
台南市政府社会局「聽見寂靜 聽障多元倡議展」に関する2026年10月25日発表
https://www.tainan.gov.tw/News_Content.aspx?n=13370&s=8843439
※展示内容と人数は、台南市政府の発表に基づいています。
| 名称 | まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部 |
|---|---|
| フリガナ | マチノネゴウドウガイシャ タイワンビジネスジギョウブ |
| 住所 | 187-0023 小平市上水新町1-17-18 |
| 営業時間 | 詳しくはお問い合わせください |
| 支払い方法 | 現金払いのみ |
| 問い合わせページ | 外部サイトに繋がります |
| こだわり |
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