まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部
高雄の揚げ物フェスに88ブランド
塩漬け卵黄を使った創作料理から市内6か所のARスタンプラリーまで。台湾の庶民料理を地域観光につなぐ仕組み
台湾の今を、日本へ。
まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部でございます。当事業部では、台湾の企業・商品・文化を日本へご紹介するとともに、地域や企業の皆さまをつなぐ相談窓口として活動しております。
連載「台湾の今」では、現地で起きている新しい動きを取り上げ、その背景にある仕組みや、日本の地域・事業者にもつながる視点とともにご紹介してまいります。
今回は、台湾南部の高雄市で開催された「2026高雄鹹酥雞嘉年華(高雄台湾式唐揚げフェスティバル)」をご紹介します。
2026年10月25日、高雄市政府観光局は、第6回となる同イベントが開幕し、台湾各地から88の飲食ブランドが参加、初日だけで6万人以上が来場したと発表しました。
注目したいのは、単に多くの飲食店を集めたグルメイベントではないことです。
一つの庶民料理を共通テーマに新しい商品を生み出し、食を楽しむ人々を周辺の観光施設へもつなげようとしている点に、今回の取り組みの特徴があります。
台湾の国民食「鹹酥雞」とは
「鹹酥雞(シエンスージー)」は、台湾の夜市や街角で親しまれている揚げ物料理です。
鶏肉を中心に、ニンニクや香辛料などで味付けし、カリッと揚げて仕上げる料理として知られています。
日本の唐揚げと似ていますが、台湾では鶏肉だけでなく、イカや野菜、さまざまな食材を揚げ物として楽しむ店もあります。
夜市や持ち帰り専門店などで気軽に購入できる、台湾の日常に根付いた食文化の一つです。
高雄市では、この庶民的な料理を主役にした「高雄鹹酥雞嘉年華」を開催しており、2026年で第6回を迎えました。
88ブランドが集結、初日だけで6万人以上が来場
今年の会場となったのは、高雄大遠百の1階にある「追夢廣場」です。
10月25日から26日までの2日間、台湾各地から88の飲食ブランドが集まりました。
参加したのは、昔ながらの鹹酥雞専門店だけではありません。
人気の揚げ物店、ホテルの飲食部門、異国料理を取り入れた店舗、ベジタリアン向けの揚げ物、特色あるドリンク店など、多様な事業者が参加しています。
高雄市政府観光局によると、初日の来場者数は6万人を超えました。
この数字は主催者による発表値であり、イベントによる売上額や周辺商店街への経済効果を示すものではありません。
それでも、日常的に親しまれている一つの料理を中心に、これだけの事業者と来場者が集まったことは注目に値します。
今年のテーマは「金沙」――同じ食材から異なる料理を生み出す
今回のイベントで特に興味深いのが、「金沙」をテーマにした創作料理です。
「金沙」とは、塩漬けにしたアヒルの卵黄などを使った、濃厚でコクのある風味の料理を指す言葉です。
今年は、この金沙を共通テーマに、参加事業者がそれぞれの特色を生かした揚げ物を開発しました。
例えば、香港風フライドチキンに金沙ソースを合わせた料理や、鶏軟骨、イカ、フライドポテトなどに金沙の風味を取り入れた商品が登場しています。
ホテルの飲食部門も参加し、一般的な屋台料理とは異なるアプローチで創作料理を提案しました。
料理コンテストで味や技術も評価
今回のイベントでは、「2026鹹酥雞評比」と呼ばれる料理コンテストも実施されました。
審査には、国立高雄餐旅大学の専門家や、ミシュラン一つ星レストラン「HAILI」のシェフなどが参加しています。
料理の味、食感、品質などを評価し、「卓越風味賞」「極致口感賞」「職人品質賞」「金沙創意風味賞」などの賞が設けられました。
また、来場者による人気投票も行われています。
こうしたコンテストは、来場者が料理を楽しむだけでなく、参加店舗の技術や工夫を知る機会にもなります。
店舗にとっても、新商品を披露し、消費者から反応を得る場となることが考えられます。
なお、10月25日の公式発表時点では、表彰は翌26日夜に予定されており、受賞結果はまだ掲載されていません。
食べて終わらない――市内6か所を巡るARスタンプラリー
今年のもう一つの特徴が、高雄市の観光アプリ「高雄GO!」を活用したARスタンプラリーです。
対象となるのは、次の6か所です。
高雄大遠百1階・追夢廣場
高雄市立図書館総館
星光水岸公園
高雄港旅運中心
高雄流行音楽中心
駁二芸術特区
参加者は、このうち好きな3か所を選び、位置情報を利用したチェックインとARスタンプの収集を行います。
条件を達成すると、アプリ内の「熊熊金幣」や、イベント限定のお守り「吃不胖平安符」の抽選に参加する資格を得られます。
ここで重要なのは、スタンプラリーの対象がイベント会場だけではないことです。
図書館、港湾施設、音楽施設、アートエリアなど、高雄市内の文化・観光施設が含まれています。
鹹酥雞を食べに来た人に、周辺の街も巡ってもらうきっかけをつくる。
食のイベントを、都市全体の観光へと広げる仕組みです。
ただし、この施策によって実際に何人が各施設を訪問したのか、周辺店舗の売上が増えたのかは、今回の発表だけでは分かりません。
食文化を「都市のブランド」に育てる
高雄市政府観光局は、鹹酥雞を台湾を代表する食文化の一つとして位置づけ、地域の飲食店や商業エリア、都市観光と結びつける方針を示しています。
今回のイベントには、昔ながらの味を守る店から、新しい料理に挑戦する店まで、幅広い事業者が参加しました。
さらに、音楽、ストリートパフォーマンス、親子向け企画、運動体験なども用意されています。
鹹酥雞という一つの料理を入口に、食べる楽しみだけでなく、さまざまな体験を組み合わせているのです。
地域の食文化を観光資源として活用する際には、単に有名な料理を紹介するだけでなく、そこに関わる店舗や人々の個性を伝えることも大切になります。
今回の高雄の取り組みは、その一つの事例といえます。
日本でも考えられること
こうした取り組みは、日本の地域の飲食店や商店街にとっても参考になります。
例えば、地域の飲食店が共通の食材やテーマを使って期間限定の商品を開発し、それぞれの店舗で提供する企画です。
同じテーマでも、和食店、洋食店、カフェ、菓子店などが参加すれば、異なる商品や味わいが生まれます。
そこに店舗を巡るスタンプラリーや、地域の文化施設・観光スポットを組み合わせることで、飲食だけではない地域の楽しみ方を提案できます。
北多摩でも、商店街や個人商店、地域の文化施設などを結びつける方法を考えられるでしょう。
ただし、規模の大きな高雄のイベントをそのまま再現する必要はありません。
数店舗が共通のテーマで商品を開発し、地域の人に巡ってもらう小さな企画から始めることもできます。
重要なのは、一つのテーマを共有しながら、各店舗の個性を生かせることです。
まとめ――一つの料理から地域全体へ
2026年の高雄鹹酥雞嘉年華には、88の飲食ブランドが参加し、初日だけで6万人以上が来場したと発表されました。
共通テーマによる創作料理、専門家によるコンテスト、そして市内6か所を巡るARスタンプラリー。
これらを組み合わせることで、庶民的な揚げ物料理を地域の飲食産業や観光施設と結びつけています。
もちろん、来場者数だけで経済的な成功を判断することはできません。
それでも、一つの食文化を入口に、商品開発、事業者同士の交流、観光施設への回遊を考える仕組みは、日本の地域づくりにも参考になるものです。
まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部では、今後も台湾各地の食文化や地域産業の取り組みを、日本の地域事業者の皆さまにご紹介してまいります。
参考資料
高雄市政府観光局「2026高雄鹹酥雞嘉年華熱力開炸近90家名店齊聚」(2026年10月25日)
https://khh.travel/zh-tw/event/news/8139/
※来場者数は主催者発表によるものです。記事内のイベント情報は2026年10月25日発表時点の内容です。
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