まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部
台湾の今を、日本へ。
まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部でございます。当事業部では、台湾の企業・商品・文化を日本へご紹介するとともに、地域や企業の皆さまをつなぐ相談窓口として活動しております。
連載「台湾の今」では、現地で起きている新しい動きを取り上げ、その背景にある仕組みや、日本の地域・事業者にもつながる視点とともにご紹介してまいります。
「昔の道は、地域の新しい観光資源になれる?」
地域の観光振興や交流人口の創出を考える際、私たちはどうしても新しい大型集客施設や目立つ観光名所の開発に目を向けがちではないでしょうか。しかし近年、台湾では古くから存在する街道や古道を再編集し、地域の歴史・集落・食・自然を一本の線で結び直すことで、持続可能な地域ブランドへと育て上げる取り組みが進められています。
2026年10月3日、台湾北西部の苗栗県を中心に開催された第3回「樟之細路徒步嘉年華(ウォーキングフェスティバル)」には400人を超える参加者が集まり、日本の信越トレイルや韓国の済州オルレなど、海を越えた海外のトレイル関係者も参加いたしました。単なるハイキング行事にとどまらない、台湾の「道を生かした地域づくり」の現在地を紐解きます。
樟脳と茶の道から、客家文化を歩く国家級緑道へ
「樟之細路(Raknus Selu Trail)」は、台湾の国家級緑道ネットワークの一つであり、桃園・新竹・苗栗・台中の客家(ハッカ)地域をつなぐ約220〜230kmの長距離トレイルです。
その基礎となっているのは、かつて樟脳や茶葉などを山林から運び出した産業・交易の古道や農道です。幾重にも重なる青々とした山並み、斜面に広がる果樹園や木々、朝夕に谷間を満たす白い霧といった豊かな自然地形のなかで、先住民族と客家の人々が行き交い、独自の生活文化を築いてまいりました。
この歴史的な道を、単に過去の遺跡として保存するのではなく、客家集落の暮らし、地域の信仰、産業の記憶、そして郷土の食文化を五感で体感する“歩く文化ルート”として再定義した点に、樟之細路の大きな特徴があります。
「歩く」ことで集落と食に出会う――体験の導線設計
今回の嘉年華では、地域の産業遺産や山林の歴史をたどるコースと、大湖の客家集落や地域の土地神である「伯公」を巡るコースなど、特色あるルートが設定されました。歩き終えた参加者を迎えたのは、ゴール地点に設けられた「大湖美食市集」や客庄音楽のステージです。
ここには、来訪者を地域へ自然に引き込む巧みな動線が設計されています。
通過するだけのドライブ観光や施設完結型の旅行とは異なり、「歩く」という速度だからこそ出会える風景や人、食の体験が、旅の満足度と地域への愛着を深めています。
地域の小道が世界と結ばれる――国境を越えたトレイル連携
さらに注目すべきは、この「地域の道」が国際的なネットワークへ発展している点です。
樟之細路は、韓国の著名なトレイル「済州オルレ」と友誼歩道(姉妹トレイル)としての交流を深めてきたほか、オーストラリアの「ビブルマン・トラック」との協定に向けた動きなど、海外との連携を意欲的に広げています。今回のイベントにも、特定非営利活動法人信越トレイルクラブの事務局長をはじめ、国内外のトレイル関係者が招かれ、台湾の参加者とともに山道を歩きました。
地域固有の古道であっても、「歩く文化」という共通言語を持つことで世界中のハイカーや地域活動者とつながり、国際的な交流人口を生み出す地域ブランドへと育ちつつあります。
日本の地域づくりや北多摩へのヒントとして
この樟之細路の試みは、日本の地域づくりにとっても大きな示唆を与えてくれます。
多大な予算を投じて新しい大型観光施設を建設しなくても、地域にはすでに、昔の街道、農道、産業の痕跡、地域の商店、飲食店、農家、寺社といった多様な資源が息づいています。それらを単体の点として散在させるのではなく、「歩くルート」という一本の物語で横につなぐことで、歩行者にとっては奥行きのある体験となり、地域にとっては持続的な滞在と消費を促す仕組みになり得ます。
私たちが活動拠点とする北多摩エリア(東村山・小平・東大和など)にも、玉川上水や野火止用水、歴史ある旧街道、武蔵野の農地、親しみやすい個店や寺社など、歩いて巡るにふさわしい資源が点在しています。
もちろん地形や歴史的背景が異なるため、「北多摩でも同じことができる」と単純に結論づけることはできません。しかし、「すでに足元にある点在した地域資源を、歩く体験としてどう編み直すか」を考える上で、台湾・樟之細路の歩みは非常に豊かな視点を提示してくれています。
まとめ
かつて樟脳や茶を運んだ交易路が、地域の人々の手で再編集され、いまや世界とつながる文化回廊として新たな息吹を宿しています。
道を整えることは、地域の歴史を再発見し、集落の誇りと産業を未来へ手渡すことでもあります。地域の記憶を大切に受け継ぎながら、現代の暮らしと国際交流へ結びつける台湾の挑戦から、学ぶべき点は少なくありません。
台湾ビジネス事業部より
まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部では、「台湾の魅力が、ここに集まる。」をコンセプトに、台湾の社会・文化・産業の最新動向を丁寧にお届けしております。
台湾企業との商談支援や販路開拓、日中ビジネス通訳・繁体字翻訳など、言葉の置き換えにとどまらず、文化的背景や地域文脈をくみ取ったきめ細やかな対話支援を行っております。台湾との事業連携や地域交流をご検討中の事業者さまは、構想段階からでもどうぞお気軽にご相談くださいませ。
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【主な確認資料】
・客家委員会・客新聞(HakkaNews)|第三屆樟之細路徒步嘉年華関連報道(2026年10月)
・客家委員会公式公報・中央社訊息平台|樟之細路國家級綠道網絡推動概況
・台湾千里歩道協会/Raknus Selu Trail 公式情報
| 名称 | まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部 |
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