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新住民とともに街の物語を紡ぐ――台湾・桃園「龍岡」が拓く多文化コミュニティツーリズム

まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部

台湾の今を、日本へ。

まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部でございます。当事業部では、台湾の企業・商品・文化を日本へご紹介するとともに、地域や企業の皆さまをつなぐ相談窓口として活動しております。

連載「台湾の今」では、現地で起きている新しい動きを取り上げ、その背景にある仕組みや、日本の地域・事業者にもつながる視点とともにご紹介してまいります。

「地域の魅力を伝えるのは、“昔から住んでいる人”だけでなくていいのだろうか?」

地域の歴史や魅力を発信する際、私たちは無意識のうちに、その土地で代々生まれ育った方々の視点や伝統的な語りだけを前提にしがちではないでしょうか。しかし近年、台湾では後から地域に加わった人々が持つ文化や日々の生活経験を受け止め、街の新たな魅力や観光資源としてともに発信していこうとする実践が進められています。

2026年10月4日、台湾北部・桃園市中壢区周辺に位置する「龍岡(りゅうこう)」エリアにおいて、桃園市観光発展基金会がアジア生態旅遊聯盟(AEN)およびインドネシア生態旅遊ネットワーク(INDECON)の代表者を招き、多文化体験を通じた視察交流を行った旨が報じられました。新住民文化や女性たちの歩み、ムスリムフレンドリーな環境を結びつけ、持続可能なコミュニティツーリズムへ発展させようとするこの試みは、これからの地域づくりに本質的な問いを投げかけています。


龍岡という土地の歩みと「新住民」という位置づけ

桃園市の龍岡は、台湾の中でもとりわけ独自の歴史と多文化が交差する地域です。1950年代以降、中国大陸の雲南省やミャンマー・タイ国境地帯(滇緬地域)から撤退してきた元国民軍の軍人とその家族が定住し、いわゆる「眷村(けんそん)」が形成されました。この歴史的背景から、米粉を用いた麺料理「米干(ミーガン)」をはじめとする雲南・タイ・ミャンマー系の食文化が根づき、特徴ある街並みが育まれてまいりました。

さらに近年、この地に新たな多様性をもたらしているのが「新住民(シンジューミン)」と呼ばれる方々の存在です。台湾における「新住民」とは、主に婚姻を通じて台湾へ移住された外国籍配偶者やその帰化者などを中心に用いられてきた行政的・社会的な呼称であり、近年では定住・包摂の対象として法整備が進められています。単なる一時的な滞在者や観光客ではなく、地域の日常をともに支える市民として位置づけられています。

龍岡は、眷村が紡いできた歴史と、近年暮らす新住民の多様な日常が重なり合う、台湾における多文化共生の象徴的な現場の一つとなっています。


国際組織を招いた龍岡視察の実際と今後の構想

中央通信社(CNA)などの報道によりますと、桃園市観光発展基金会は、国際的なエコツーリズム専門家を龍岡に招き、地域資源の体感と将来的な国際観光・地域連携に向けた意見交換を行いました。

今回の交流における具体的な体験と、今後示された構想は以下の通りです。

  • 今回の交流で実施された体験
    一行は「忠貞新村文化園區」にあるムスリムフレンドリーキッチン(穆斯林友善廚房)を訪れ、地域の特色ある飲食体験を行いました。
  • 今後つなげていく地域観光の構想
    基金会は今後、新住民文化、女性たちの地域の物語、龍岡清真寺(モスク)、ムスリムフレンドリーな飲食などを生かし、「女路」や新住民による導覧(ガイド)、地域の文化資源をつなぐことで、国際的な魅力を持つコミュニティツーリズムへ発展させる方針を示しています。

今回の訪問を端緒とし、地域に点在する固有の文化要素を一つの体験ルートとして束ね、持続可能な観光交流へつなげていくことが構想されています。


紹介される側から「地域を語る側」へ――新住民人材の育成

今回の取り組みの背景として注目されるのが、行政による「女性のエンパワーメント(培力)」施策と、観光発信の結びつきです。

報道によりますと、桃園市婦幼発展局では新住民を対象とした導覧(ガイド)人材育成を進めており、桃園老城區專班などの取り組みを通じて35名の新住民を「地方導覽者」として養成したことが言及されています。新住民の皆さまが自身の文化や生活経験を活かし、来訪者が街を知るための案内役を担えるよう後押しする試みです。

なお、今回の専門家向け視察そのものをこの35名が案内したとする記述は確認できませんが、龍岡で進められている「女路」やコミュニティ観光の取り組みからは、「新住民を単に紹介される対象にとどめず、自ら地域を語り伝える主体として位置づける」という明確な方針がうかがえます。後から加わった住民が自らの言葉で街の魅力を語り始めることは、地域への帰属意識を深めるとともに、観光体験に固有の深みをもたらすものとして期待されています。


日本の地域づくりや地域メディアへの示唆

この龍岡の試みは、日本各地の地域づくりや情報発信にとっても、多くの示唆を含んでいるように感じられます。

日本国内においても、多様な国籍や文化背景を持つ人々が地域住民として暮らす姿が一般的になりつつあります。しかし、地域資源の掘り起こしや観光情報の発信においては、依然として「代々続く歴史や伝統文化」のみに着目し、後から移住してきた方々を「支援を必要とする受け身の存在」として捉えてしまう場面も少なくないのではないでしょうか。

桃園・龍岡の実践が教えてくれるのは、「後から地域に加わった人々が持ち込んだ食や文化、日々の生活経験もまた、その街の現在進行形の魅力になり得る」という視点です。

昔から受け継がれてきた歴史を尊重しながらも、新しい住民の視点や物語を地域の大切な語りとして包摂していくこと。「地域の魅力を語るのは誰か」という問いを広げていく姿勢こそが、これからの多文化共生社会における持続可能な地域づくりの一つの可能性を示しているのではないかと、当事業部では考えております。


まとめ

台湾・桃園の龍岡が取り組む多文化コミュニティツーリズムは、歴史的な眷村の記憶、龍岡清真寺やムスリムフレンドリーな食、そして女性たちや新住民が重ねてきた日々の営みを、地域の固有な価値として再編集する試みです。

住民自身が地域の語り手となる仕組みづくりは、多文化が共存する街の誇りを育てる契機としても期待されます。歴史を守るだけでなく、新たな担い手とともに物語を更新し続ける龍岡の挑戦は、日台双方の地域社会に確かなヒントを与えてくれています。


台湾ビジネス事業部より

まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部では、「台湾の魅力が、ここに集まる。」をコンセプトに、台湾の社会・文化・産業の最新動向を丁寧にお届けしております。

台湾企業との商談支援や販路開拓、日中ビジネス通訳・繁体字翻訳など、言葉の置き換えにとどまらず、文化的背景や地域文脈をくみ取ったきめ細やかな対話支援を行っております。台湾との事業連携や地域交流をご検討中の事業者さまは、構想段階からでもどうぞお気軽にご相談くださいませ。

【お問い合わせ】
受付時間:9:00〜17:00(土日祝日含む)
ご相談方法:当社Webサイトのお問い合わせ窓口よりお気軽にご連絡くださいませ。


【主な確認資料】
・中央通訊社(CNA)|桃園龍岡推多元文化生態旅遊 邀國際組織踩線交流(2026年10月4日)
・桃園觀光導覽網|龍岡清真寺
・2026桃園米干節官方網站|龍岡女路・小旅行路線介紹
・桃園市政府婦幼發展局|新住民培力與地方導覽人才培育計畫


基本情報

名称まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部
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