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古い建物を残した“その先”へ――台湾・高雄「醒村」が地域の若者と日本・岡山をつなぐ

まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部

台湾の今を、日本へ。

まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部でございます。当事業部では、台湾の企業・商品・文化を日本へご紹介するとともに、地域や企業の皆さまをつなぐ相談窓口として活動しております。

連載「台湾の今」では、現地で起きている新しい動きを取り上げ、その背景にある仕組みや、日本の地域・事業者にもつながる視点とともにご紹介してまいります。

古い歴史的な建物をどう残すか。この問いは、台湾でも日本でも長く議論されてまいりました。しかし近年、台湾の現場でより強く意識されているのは、「残した建物の“その先”に、地域は何を吹き込むのか」という実践です。

2026年10月3日、台湾南部・高雄市岡山区にある歴史建築群「醒村(醒村文化景観園区)」が、約4年にわたる修復工事を経て全面開園を迎えました。かつて日本統治期に建設され、戦後は空軍の軍人とその家族が暮らす「眷村(けんそん)」として時を刻んできた空間です。単に建物を綺麗に直して展示するだけの保存にとどまらず、地域の若者による創業拠点や地元の学校・住民が参加する文化活動、さらには「同じ名前」を縁にした日本・岡山との国際交流まで、現在進行形の地域の営みが重ねられています。


醒村とは何か――高級飛行員宿舎から現代の文化景観へ

醒村の歩みは、1940年代の日本統治期にさかのぼります。高雄眷村の公式紹介によりますと、この場所は「日本海軍航空隊の高級飛行員宿舎群」として整備されました。和式の瓦屋根と連続するコンクリートアーチ(拱圈)が組み合わされた特徴的な景観を今に伝えています。

戦後、中華民国空軍がこの地を引き継ぐと、空軍飛行員やその家族が生活を営む「眷村」となりました。激動の時代背景を色濃く残す場所であり、日本でも配信などで親しまれた台湾の長編時代ドラマ『一把青(A Touch of Green)』の象徴的なロケ地としても広く知られております。

住民の移転に伴い一時は荒廃が進みましたが、その歴史的価値と特異な景観から文化景観として登録され、約4年間にわたる丁寧な修復・再生事業が進められてまいりました。


10月3日に何が始まったのか――生活の場として開かれた園区

2026年10月3日、「AWAKE 喚醒醒村」を掲げて全面開園を迎えた醒村は、「2026 高雄眷村嘉年華(眷村カーニバル)」の幕開けを飾る中心舞台となりました。高雄市側は近年の眷村活用について、「歴史的な集落を現代の生活の場へ転換している」と明確に説明しており、その方針が実際のプログラムにも鮮やかに反映されています。

開園に合わせてスタートした主な取り組みは以下の通りです。

  • 地域の学校・団体による演奏
    空軍官校の軍楽隊や地元・岡山の13校に及ぶ学校・地域団体による音楽演奏(青春少年心花開音楽会)が催されました。
  • 記憶をつなぐオリジナル舞台
    醒村を題材に、かつて実際にこの醒村で暮らした経験を持つ俳優・張晨光氏も出演したオリジナル穿越歌舞劇『醒村原來是醬』が上演されました。
  • 多彩な個店が集う「剛好風土市」
    眷村文化を軸に、芸術文化、地域の食、公共参加を組み合わせた200組のブランドが集まる市集が展開されました。
  • 歴史と記憶をたどる常設展示
    建築遺構やドラマ『一把青』の記憶を伝える展示に加え、土地と人々の記憶を紹介する企画が公開されています。

開園週末にとどまらず、街歩き(走讀)や文化講座、ワークショップなどが継続的に展開される計画となっており、一時的な祝祭で終わらせない仕組みが整えられています。


建物を保存するだけではない地域再生の仕組み

醒村の再生において特に注目されるのが、地方創生や青創(若者による創業・地域活動)の舞台としての位置づけです。

園区では、高雄市文化局と青年局が連携し、岡山の青年創業基地「群山夢嶼」を計画しているほか、開園に合わせた「岡山青創ブランド限定快閃店(ポップアップストア)」などが実施されています。地元のクリエイターや地域ブランドなどが活動し、新しい地域の仕事や表現につながる場が整えられつつあります。

歴史ある建物を単なる展示施設にしてしまうと、一度訪れたら再訪しない場所になりがちです。醒村では、地域の若い世代が実際に事業を営み、挑戦できる受け皿を用意することで、日常的に人々が行き交う動線を丁寧に設計しています。


台湾・岡山と日本・岡山――同名をきっかけにした交流の広がり

今回の開園行事において、日台の地域連携という観点から興味深い試みとなったのが「岡山祭─台日岡山友好交流祭」です。

公式プログラムにおいて本企画は、「二つの岡山が海を越えて出会い、地方創生を橋渡しに文化交流と世代継承をつなぐ」という趣旨が明記されています。漢字でまったく同じ「岡山」という地名を持つ縁を入口に、日本・岡山から35組を超える交流関係者が現地を訪れました。

会場では日本の岡山の観光紹介や伝統的な祭りの体験、カルチャーマーケット、音楽ステージなどが催され、台湾・岡山の若者や住民と直接言葉を交わす光景が見られました。大がかりな国家間の枠組みだけではなく、「同名の地域同士」という親しみやすい共通項を活かし、文化や地方創生に携わる実務者や表現者が顔の見える形で交流を育んでいます。


日本の地域に置き換えて考えると

この醒村の取り組みは、日本各地、そして私たちが暮らす北多摩でも、深く重なる問いを投げかけてくれています。

東村山市、小平市、東大和市といった多摩エリアにも、近代の産業遺産や昔ながらの街並み、歴史ある建物が点在しています。そうした地域資産を前にしたとき、「多大な維持管理費をかけて保存するか、経済合理性に基づいて解体するか」という二者択一で議論が止まってしまう場面は少なくありません。

しかし醒村の実践は、その間にある「残した場所に、現在の地域の営みをどう重ねていくか」という視点の大切さを物語っています。

歴史的な空間は、新築の建物には出せない固有の物語や風格を持っています。そこに地域の若い事業者や個店が活動できるスペースを組み込み、地元の学校や住民が日常的に関われる余白を残し、外の地域とつながる窓口として機能させていくこと。過去の記憶を受け継ぎながら現代の生活の場へと転換していく試みは、古い建物を地域の資産として生かし続けるための、一つの可能性を示しています。


まとめ

台湾・高雄の醒村は、日本統治期の海軍航空隊関係者の宿舎、戦後の眷村という重層的な歴史を抱えながら、いま地域の若者や海を越えた仲間が集う開かれた拠点へと踏み出しました。

建物を修復することはゴールではなく、地域が新しい一歩を踏み出すための基盤づくりにほかなりません。歴史を尊重しながら、次の世代の挑戦や多様な交流を歓迎する醒村の歩みは、これからの日台双方の地域づくりにおいて、多くの気づきを与えてくれています。


台湾ビジネス事業部より

まちのね合同会社 台湾ビジネス事業部では、「台湾の魅力が、ここに集まる。」をコンセプトに、台湾の社会・文化・産業の最新動向を丁寧にお届けしております。

日本と台湾の地域間連携や企業間提携、台湾現地での情報収集や販路開拓、ビジネス通訳・繁体字翻訳など、言葉の置き換えにとどまらず、文化的背景をくみ取った対話支援を行っております。台湾との事業展開や地域交流についてご検討中の事業者さまは、構想段階からでもどうぞお気軽にご相談くださいませ。

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【主な確認資料】
・高雄眷村公式|2026高雄眷村嘉年華「岡山醒村・樂群村 活動資訊一覽」
・高雄眷村公式|岡山醒村
・高雄眷村公式|2026高雄眷村嘉年華
・高雄眷村公式|岡山醒村・樂群村「特展、裝置藝術」


基本情報

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