地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

東村山市・小平市・東大和市の地域情報サイト「まいぷれ」東村山市・小平市・東大和市

《浜辺の歌》の「あした」は明日ではない?――朝と夕べの記憶、あまり歌われない3番の謎

こいねこ

林古溪と成田為三が残した名曲。100年以上前の詩を読み直してみる


「あした浜辺をさまよえば」

日本の歌として長く親しまれてきた《浜辺の歌》。


ゆったりとした旋律を聴くと、静かな海辺に波が寄せては返す光景が浮かんできます。

ところで、歌い出しの「あした」は、いつのことでしょうか。

明日、浜辺へ出かけるという意味だと思っていた方もいらっしゃるかもしれません。


実は、ここでの「あした」は、翌日ではなく「朝」を意味する古い日本語です。

そして2番には、「ゆうべ」という言葉が登場します。

朝と夕べ。昔のことと、昔の人。

この二つの対比を知ると、歌の風景が少し違って見えてきます。


さらに資料を調べると、現在あまり歌われない3番と、失われた詩の一部をめぐる意外な歴史も分かってきました。今回は、《浜辺の歌》の言葉と音楽、そして作品が生まれた背景をたどってみたいと思います。


「あした」は、翌日ではなく朝


現代の日本語では「あした」といえば、普通は翌日のことです。

しかし、古い日本語の「あした」には、朝という意味があります。

《浜辺の歌》の冒頭も、その意味で読むことができます。


歌い手は朝の浜辺を歩きながら、昔の出来事を思い出しています。

ここで使われる「しのばるる」も、今ではあまり耳にしない表現です。

「しのぶ」は、過ぎ去ったことを懐かしく思うこと。「しのばるる」は、自然と思い出されるという意味合いで読むことができます。


朝の浜辺を歩いていると、風の音や雲の様子、波の音などがきっかけとなり、昔の記憶がよみがえってくる。

そんな情景が描かれているのです。

朝には「昔のこと」、夕べには「昔の人」

《浜辺の歌》の1番と2番を比べると、よく考えられた対比があります。


1番2番
あした(朝)ゆうべ(夕べ)
さまよえばもとおれば
昔のこと昔の人
風・雲・波・貝波・月・星


1番では、昔の「こと」を思い出します。

ところが2番では、昔の「人」が思い出されます。

この違いが、とても印象的です。


朝の浜辺では、懐かしい出来事が心に浮かぶ。

夕方の浜辺では、その記憶につながる誰かの姿が思い出される。

そんなふうにも読むことができます。


ただし、歌詞には、その人物が誰なのかは書かれていません。

家族なのか、友人なのか、あるいは大切な人なのか。

それを決めることはできません。


誰を思い出しているのかが明示されていないからこそ、聴く人それぞれの記憶を重ねられる歌なのかもしれません。


「さまよう」と「もとおる」


1番と2番には、浜辺を歩く様子にも違いがあります。

「さまよう」は、あてもなく歩き回ること。

「もとおる」は、歩き回る、巡るといった意味を持つ古い言葉です。

どちらも、目的地へまっすぐ進むというより、浜辺を歩きながら何かを思っている姿を感じさせます。


朝と夕方。

昔の出来事と、昔の人。


波が寄せては返すように、記憶もまた、心の中に浮かんでは消えていく。

そう考えると、《浜辺の歌》の穏やかな旋律には、どこか切ない響きも感じられます。


最初の題名は《はまべ》だった


《浜辺の歌》の詩が発表されたのは、1913年(大正2年)8月。

東京音楽学校学友会の雑誌『音楽』に掲載されました。

そのときの題名は、現在の《浜辺の歌》ではなく、平仮名の《はまべ》でした。


作詩者は林古溪(はやし・こけい)。

詩の末尾には「作曲用試作」という言葉が添えられていました。

つまり、音楽を学ぶ人たちが曲をつけることを想定した詩として発表されたのです。


成田為三の音楽と、竹久夢二の表紙


この詩に、現在親しまれている旋律をつけたのが成田為三です。

成田は1893年、秋田県に生まれ、東京音楽学校で学びました。


作曲時期は1915~1916年頃とされますが、正確な日付は確定していません。

そして1918年(大正7年)、《濱邊の歌》としてセノオ楽譜から出版されました。


このとき、楽譜の表紙を手がけたのが画家の竹久夢二です。

1918年の『セノオ楽譜no.98「浜辺の歌」』は、京都国立近代美術館の所蔵作品として記録されています。

詩と音楽だけでなく、表紙の絵にも当時の芸術文化が息づいていたのですね。


波が寄せては返すようなピアノ伴奏


《浜辺の歌》の魅力は、歌詞だけではありません。

ピアノ伴奏にも耳を傾けてみてください。


流れるような音の動きが繰り返され、波が寄せては返すような印象を与えます。

ピティナ・ピアノ曲事典でも、伴奏の音型と、詩に描かれた時間や心情の変化との関係が解説されています。

旋律は穏やかですが、ただ同じ表情を繰り返しているわけではありません。


朝の記憶と夕べの記憶。


それぞれの言葉をどのように歌い分けるかによって、曲の印象も変わります。

歌とピアノが一緒になって、海辺の風景を描いているように感じられます。


実は、3番が存在していた


現在、《浜辺の歌》は1番と2番で歌われることが一般的です。

ところが、1913年に発表された《はまべ》には、3番が存在していました。

そして1918年の出版楽譜にも、3番が掲載されています。


ただし、1913年の詩と1918年の楽譜では、3番の言葉が一部異なっているのです。


例えば、1913年の詩にある「ぬれもひぢし」という表現は、1918年の出版譜では「ぬれもせじ」となっています。

前者は濡れてしまったことを、後者は濡れないだろうということを表すため、意味が変わってしまいます。


また、「すでにいえて」と「すべていえて」という違いもあります。

これは、単なる表記の揺れではありません。


歌詞の内容を考えるうえで重要な違いです。


もともとは4番まであった?


さらに驚くことに、《はまべ》は当初、全4連の詩として構想されていたと伝えられています。

しかし、1913年に雑誌へ掲載された時点では、すでに3連になっていました。

後年の資料には、もともとの3連目の前半と4連目の後半が結びつけられてしまったという説明があります。


この経緯については、林古溪の息子で国語学者の林大による証言が伝えられています。

同志社女子大学の吉海直人教授による解説でも、林古溪がその歌詞では意味が通らないと話していたという証言が紹介されています。


ただし、当初の4連をすべて確認できる原稿は残っていません。

そのため、失われた部分の正確な言葉を知ることはできません。


なぜ3番は歌われなくなったのか


3番が現在あまり歌われない理由も、この成立過程と関係していると考えられます。

大阪府立中央図書館の調査では、第二次世界大戦後、作詩者の意向によって3番が削除され、2番までの歌として扱われるようになったと説明されています。


また、林古溪が3番の歌詞を好まなかったという証言も伝えられています。

ただし、実際の楽譜や教科書で3番が省略されていった経緯には、複数の資料や編集上の判断が関わります。


そのため、ある一つの出来事だけで、現在の形になったと断定することは避けたいところです。

確かなのは、1913年と1918年の資料には3番があり、現在は1番と2番で歌われることが一般的だということです。


《浜辺の歌》は、どこの海を歌ったの?


この歌のモデルとなった場所については、神奈川県の湘南海岸を挙げる説があります。

林古溪が幼い頃に湘南地域で暮らしていたことが、その背景にあります。

特に辻堂周辺をモデルとする説明も見られます。


そのため、特定の海岸が舞台だと断定することはできません。

一方で、この歌を聴くと、私たちはそれぞれ違う海を思い浮かべるのではないでしょうか。

  • 子どもの頃に訪れた海。
  • 誰かと一緒に歩いた浜辺。
  • 懐かしい人を思い出す風景。

そんな一人ひとりの記憶を重ねられることも、この歌の魅力なのかもしれません。


《浜辺の歌》を、もう一度見直す


「あした」は明日ではなく朝。

1番では昔の出来事を、2番では昔の人を思い出す。

現在あまり歌われない3番には、詩の成立をめぐる複雑な歴史


朝の浜辺を歩きながら、昔のことを思い出す。

夕方の浜辺を歩きながら、昔の人を思い出す。


誰を思い出しているのか、何があったのかは、歌詞には書かれていません。

だからこそ、聴く人それぞれの記憶を重ねることができるのでしょう。


《浜辺の歌》は、海の風景を描きながら、人の心に残る記憶を歌った作品としても聴くことができます。

こいねこでも、言葉の意味や曲が生まれた背景を大切にしながら、音楽をお届けしていきたいと思います。

参考資料

  • 営業時間不定
070-8397-4063

基本情報

名称こいねこ
フリガナコイネコ
住所187-0023 小平市上水新町1丁目17-18
電話番号070-8397-4063
メールアドレスkoinekomusic@gmail.com
営業時間詳しくはお問い合わせください
Instagramアカウントhttps://www.instagram.com/koinekomusic/
関連ページサンプル(YouTube)
こだわり
こいねこイベントカレンダー

口コミ

このお店・施設に行ったことがありますか?あなたの体験や感想を投稿してみましょう。

まいぷれ[東村山市・小平市・東大和市] 公式SNSアカウント