こいねこ
映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽。
エンニオ・モリコーネによる美しい旋律を思い浮かべる方も多いと思います。
ところが、この曲を声楽曲として探してみると、
「Se tu fossi nei miei occhi per un giorno…」
というイタリア語で始まる作品に出会います。
「映画に、こんな歌詞があっただろうか?」
と思われるかもしれません。
これは、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』で使われた「愛のテーマ」の旋律に、イタリア語詞を付けた歌曲版です。
タイトルは、
『Cinema Paradiso (Se)』
今回は映画の物語から少し離れて、この「Se」の歌詞を読みながら、「愛のテーマ」にどんな言葉が重ねられているのかを見ていきます。
まず、「愛のテーマ」と「Se」の関係から
『ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo Cinema Paradiso)』は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督による1988年のイタリア映画です。
映画音楽を担当したのはエンニオ・モリコーネ。
作品には、息子アンドレア・モリコーネが作曲に関わった「Tema d’amore(愛のテーマ)」があります。
ここで区別しておきたいのが、映画の「愛のテーマ」と歌曲版「Se」です。
映画で使われた「愛のテーマ」は器楽による映画音楽。
その旋律にイタリア語詞を付け、歌として歌われているのが『Cinema Paradiso (Se)』です。
歌曲版のクレジットでは、
音楽:Ennio Morricone / Andrea Morricone
作詞:Alessio De Sensi
とされています。
ジョシュ・グローバンもこの歌曲版を録音しており、2001年のデビューアルバム『Josh Groban』に収録されています。
「Se」って、どういう意味?
タイトルに付いている、
Se
はイタリア語で、
「もし〜なら」
という意味です。
歌詞では、この「Se」が何度も使われます。
最初に歌われるのは、
“Se tu fossi nei miei occhi per un giorno”
大意としては、
「もし一日だけ、あなたが私の目になれたなら」
という言葉です。
なぜ「私の目」なのでしょう。
もし、あなたが私の目になれたなら
歌い手が伝えようとしているのは、自分には愛する相手がどんなふうに見えているのか、ということです。
相手は、自分自身が愛する人の目にどう映っているのかを見ることはできません。
だから、
もし一日だけでも、あなたが私の目を通して自分を見ることができたなら。
私があなたの瞳の中に見つけている美しさを、あなた自身にも見ることができるのに。
そんな思いから歌が始まります。
歌い手自身も、それが「魔法」なのか「現実」なのか分からないほど、相手の中に美しさを感じています。
「愛しています」と直接伝えるのではなく、
「私の目を通して、あなた自身を見てほしい」
と語りかけるところから、この歌は始まります。
次は「目」から「心」へ
歌詞は、次の「Se」へ進みます。
今度は、
“Se tu fossi nel mio cuore per un giorno”
大意は、
「もし一日だけ、あなたが私の心の中にいられたなら」
です。
最初は「目」でした。
今度は「心」。
目を通して相手をどう見ているのかを伝えたあと、今度は自分の中で何が起きているのかを知ってほしいと歌います。
相手を強く抱きしめたとき。
胸と胸を合わせて、一緒に呼吸しているとき。
その瞬間、自分が何を感じているのか。
言葉で説明する代わりに、
「私の心の中に入ることができたなら分かるのに」
と語りかけます。
「目」から「心」へ。そして「魂」へ
歌詞は、さらに深い場所へ進みます。
“Se tu fossi nella mia anima un giorno”
大意は、
「もし一日だけ、あなたが私の魂の中にいられたなら」
です。
ここまで並べると、歌詞の流れが見えてきます。
最初は、
目(occhi)
次に、
心(cuore)
そして、
魂(anima)
へ。
外から相手を見る「目」から始まり、自分の内側にある「心」へ。そして最後には、さらに深い「魂」へと進んでいきます。
「あなたに分かってほしい」という歌
歌い手は、自分の気持ちを説明する代わりに、
と、場所を変えながら同じ願いを重ねていきます。
そこから伝わってくるのは、
「私があなたをどれほど愛しているのか、私と同じように感じてもらえたら」
という思いです。
そして最後にたどり着くのが、
「私が感じているものは、ただ愛だけ」
という内容です。
「目」から始まった言葉が、「心」「魂」と内側へ進み、最後に「愛」へたどり着きます。
映画の「愛のテーマ」に、なぜこの言葉が合うのか
ここからは、歌詞と映画を踏まえた私たちなりの読み方です。
『ニュー・シネマ・パラダイス』には、いくつもの形の愛が描かれています。
映画の「愛のテーマ」は、もともと言葉を持たない音楽です。
歌曲版「Se」では、その旋律に、
「もし、私の中に入ることができたなら、この気持ちが分かるのに」
という内容の言葉が重ねられています。
映画の物語を知ったうえで聴くのか、歌曲として初めて聴くのか。
それによっても、この歌から思い浮かべるものは変わってきそうです。
映画の中で「Se」が歌われているわけではありません
歌曲として聴くときに、もう一つ知っておきたいことがあります。
映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の中で、登場人物がこのイタリア語詞を歌っているわけではありません。
『Cinema Paradiso (Se)』は、映画で使われた「愛のテーマ」の旋律にイタリア語詞を付けた歌曲版です。
そのため、「映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の歌」とだけ紹介すると、映画の中で歌われている曲のように受け取られるかもしれません。
紹介するときには、
「『ニュー・シネマ・パラダイス』の愛のテーマにイタリア語詞を付けた歌曲版」
とすると、両者の関係が分かりやすくなります。
ジョシュ・グローバンも録音
『Cinema Paradiso (Se)』は、歌曲としても知られるようになりました。
ジョシュ・グローバンは2001年のデビューアルバム『Josh Groban』にこの曲を収録しています。
PBSが公開しているコンサートのクレジットにも、
“Cinema Paradiso Se”
Music by Ennio Morricone & Andrea Morricone
Lyrics by Alessio De Sensi
と記録されています。
映画のために生まれた旋律に言葉が加わり、今度は「歌」としても聴かれるようになったことが分かります。
「Se」を知ってから旋律を聴いてみる
映画を観たことがある方にとって、『ニュー・シネマ・パラダイス』の旋律には映画の場面や記憶が重なっているかもしれません。
そこへ「Se」の言葉を重ねてみます。
「Se」という一語から始まる言葉は、
目 → 心 → 魂
と、少しずつ内側へ進んでいきます。
そして最後に残るのが「愛」です。
映画の「愛のテーマ」を知っている方も、歌曲版を初めて知った方も、次にこの旋律を耳にするときには、そこに重ねられた言葉にも耳を傾けてみてください。
主な参考資料・確認資料
PBS / Great Performances「Josh Groban in Concert – Production Credits」
『Cinema Paradiso Se』について、音楽をEnnio Morricone & Andrea Morricone、歌詞をAlessio De Sensiとする公演クレジットを確認。
PBS / Great Performances「Josh Groban in Concert」
演奏曲目および『Cinema Paradiso (Se)』のクレジットを確認。
Josh Groban『Josh Groban』(Reprise Records, 2001)関連資料
アルバムへの『Cinema Paradiso (Se)』収録を確認。
MusicBrainz「Cinema Paradiso (Se)」関連資料
『Nuovo Cinema Paradiso: Tema d’amore』との関係、作曲・作詞クレジット、録音資料を確認。
※本記事では著作権保護中の歌詞全文は掲載せず、内容を解説するために必要な短いフレーズのみ引用しています。
※記事中のイタリア語歌詞の日本語表現は、内容を分かりやすく紹介するための大意です。逐語訳ではありません。
| 名称 | こいねこ |
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| フリガナ | コイネコ |
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