こいねこ
『ニュー・シネマ・パラダイス』
映画を観たことがなくても、エンニオ・モリコーネによる美しい音楽を耳にしたことがある方は多いと思います。
この音楽は、映画の中でどのように使われ、物語と結びついているのでしょうか。
今回は映画のストーリーをたどりながら、『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽についてご紹介します。
※物語の重要な場面について触れています。これから映画をご覧になる方はご注意ください。
物語は「ある人の死」から始まる
『ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo Cinema Paradiso)』は、ジュゼッペ・トルナトーレが監督・脚本を手がけたイタリア映画です。
物語の現在は1980年代のローマ。
映画監督として成功したサルヴァトーレのもとに、故郷から知らせが届きます。
「アルフレードが亡くなった」
その名前を聞いたサルヴァトーレは、少年時代を思い出します。
舞台はシチリア島の村。
少年時代のサルヴァトーレは「トト」と呼ばれ、映画が大好きな少年でした。
村には、人々が集まる映画館「シネマ・パラダイス」がありました。
そこで映写技師をしていたのがアルフレードです。
映画は、現在のサルヴァトーレから少年時代のトトへと時間をさかのぼりながら進んでいきます。
カンヌ国際映画祭の公式資料でも、アルフレードの死を知らせる電話をきっかけに、サルヴァトーレが幼少期や村、映画館で過ごした日々を思い出す物語として紹介されています。
トトとアルフレード
少年トトにとって、映写室は憧れの場所でした。
フィルムが回り、そこから放たれた光がスクリーンに映像を映し出す。客席では大勢の人が笑ったり、泣いたりしています。
その映写室にいたのがアルフレードでした。
最初はトトを追い払おうとしますが、二人は次第に親しくなり、アルフレードはトトに映写の技術を教えるようになります。
トトは「シネマ・パラダイス」で映画を知り、アルフレードと出会い、成長していきます。
映画館で過ごした時間は、やがて故郷を離れるトトの中に、少年時代の記憶として残っていきます。
音楽を担当したエンニオ・モリコーネ
この映画の音楽を担当したのが、イタリアを代表する映画音楽作曲家、エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)です。
カンヌ国際映画祭の公式クレジットにも、音楽担当としてモリコーネの名前が記録されています。
映画の中では、印象的な旋律が場面に合わせて何度も登場します。
少年時代、故郷、アルフレードとの時間、恋、そして別れ。
同じ旋律を耳にしても、物語が進むにつれて受ける印象が変わっていきます。
「愛のテーマ」には息子アンドレアも関わっている
『ニュー・シネマ・パラダイス』を代表する音楽の一つに、「愛のテーマ(Tema d’amore / Love Theme)」があります。
この映画の音楽というとエンニオ・モリコーネの名前がよく知られていますが、「愛のテーマ」には息子のアンドレア・モリコーネ(Andrea Morricone)も関わっています。
オリジナル・サウンドトラックでは、「Love Theme」の作曲者としてAndrea Morriconeがクレジットされています。
一方、後年の録音などでは、エンニオとアンドレアの双方が作曲者として表記されているものもあります。
父エンニオと息子アンドレア。
一つの映画の中に、モリコーネ親子による音楽が残されています。
「メインテーマ」と「愛のテーマ」は別の曲
『ニュー・シネマ・パラダイス』には、
「メインテーマ(Nuovo Cinema Paradiso)」と、
「愛のテーマ(Tema d’amore)」
があります。
同じ映画で使われていますが、それぞれ別の曲です。
メインテーマはエンニオ・モリコーネ、「愛のテーマ」はオリジナル・サウンドトラックでアンドレア・モリコーネの作曲として記録されています。
コンサートなどでは二つの旋律を組み合わせた編曲もあり、まとめて『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽として覚えている方もいるでしょう。
それぞれの旋律を聴き分けてみるのも楽しみ方のひとつです。
なぜ、この音楽を聴くと懐かしさを感じるのか
ここからは、映画を観たうえでの私たちなりの読み方です。
物語は、大人になったサルヴァトーレが過去を思い出す形で進みます。
私たちがスクリーンで見るトトの少年時代も、現在のサルヴァトーレから見れば、すでに過ぎ去った時間です。
そこにモリコーネの旋律が何度も流れます。
物語の序盤で聴いたときには少年の好奇心や楽しさを感じた旋律が、映画が進むにつれて、もう戻ることのできない時間を思わせる音楽に聞こえてくることがあります。
その旋律と一緒にトトの人生を見てきた私たちの受け止め方が変わっていきます。
『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽を聴いたときに感じる懐かしさには、映画のこうした時間の描き方も関係しているように思います。
映画館も、町も、人も変わっていく
トトは成長し、村の様子も変わっていきます。
映画を取り巻く環境も変わり、かつて村中の人々が集まった「シネマ・パラダイス」も、そのままの姿では残りません。
トト自身も故郷を離れます。
大切だった場所や人から離れて、その後の人生を生きていく。
それでも、そこで過ごした時間や受け取ったものまで消えるわけではありません。
サルヴァトーレにとって、その一つが「映画」でした。
そして、あの最後のフィルムへ
物語の最後。
故郷へ戻ったサルヴァトーレは、アルフレードが自分に遺したフィルムを受け取ります。
映写してみると、そこに残されていたのは、かつて映画館で上映する際に切り取られていた映画のキスシーンでした。
少年時代、村の司祭による検閲でカットされていた場面を、アルフレードは捨てずに残していたのです。
サルヴァトーレは、次々と映し出されるキスシーンを見ながら笑い、涙を流します。
映画を通して出会ったトトとアルフレード。
二人の長い時間の最後に、アルフレードが遺した映画が再びスクリーンに映し出されます。
この場面とともに音楽を聴いたことがある方にとって、『ニュー・シネマ・パラダイス』の旋律は、映画の記憶と切り離せないものになっているのではないでしょうか。
アルフレードから受け取ったもの
少年だったトトは、やがて映画監督サルヴァトーレになります。
かつて映写室からスクリーンを見つめていた少年が、自分で映画を作る人になりました。
その出発点には、「シネマ・パラダイス」で過ごした時間とアルフレードとの出会いがあります。
アルフレードが最後に遺したフィルムには、二人が映画館で過ごした時間も一緒に詰まっていたように感じます。
世界で評価された『ニュー・シネマ・パラダイス』
『ニュー・シネマ・パラダイス』は、1989年のカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞しました。
さらに1990年、第62回アカデミー賞では外国語映画賞を受賞しています。
シチリアの小さな村と映画館を舞台にした物語は、イタリア国外でも広く知られる作品となりました。
映画を知らなくても楽しめる音楽
『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽は、現在では映画館を離れ、コンサートでも耳にする機会があります。
映画を観たことがある方なら、トトやアルフレード、シネマ・パラダイス、最後のフィルムを思い浮かべるかもしれません。
映画を観たことがない方には、また違った風景が浮かぶでしょう。
子どもの頃に過ごした場所だったり、昔一緒にいた人だったり、もう戻ることのできない時間だったり。
同じ旋律を聴いても、思い浮かべるものは人によって違います。
こいねこでは、コンサートで取り上げる音楽について、その背景や作品にまつわる物語もご紹介しています。
映画をご覧になったことがある方も、まだ観たことがない方も、それぞれの風景を思い浮かべながら『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽をお楽しみください。
主な参考資料・確認資料
Festival de Cannes「NUOVO CINEMA PARADISO
Academy of Motion Picture Arts and Sciences「The 62nd Academy Awards|1990
『Cinema Paradiso』Original Motion Picture Soundtrack関連資料
「Nuovo Cinema Paradiso」および「Tema d’amore(Love Theme)」の作曲クレジット
Miramax「Cinema Paradiso」
※映画の物語と音楽についての記述には、公式資料などから確認できる事実と、作品を鑑賞したうえでの「こいねこ」としての読み方が含まれています。
| 名称 | こいねこ |
|---|---|
| フリガナ | コイネコ |
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| 電話番号 | 070-8397-4063 |
| メールアドレス | koinekomusic@gmail.com |
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