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1、パーチ井上さん【第3回】正式オープンから20日。子どもたちと始まった場所づくり

(更新)

東大和市駅前のフリースクール「パーチ」【このまちで、はじめる1-3】

フリースクール「パーチ」代表の井上さん

想定以上の利用希望、変わり始めた過ごし方。そして見えてきた次の課題

 

2026年10月1日、東大和市駅から徒歩約2分の場所にあるフリースクール「パーチ」が正式オープンしました。

9月のプレオープン時、代表の井上さんは、あえて完成させずに残した空間について、こう話していました。

 

「これから、その隙間を埋めていくのは子どもたちなので」

 

それから約1か月。10月21日に再びパーチを訪ねると、子どもたちが集まり、思い思いに過ごす場所へと変わり始めていました。一方で、実際に運営を始めたからこそ見えてきたこともあります。想定を上回る利用希望。自由に過ごすことと学習を両立するための工夫。そして、教室の広さという新たな課題。

 

「このまちで、はじめる。」第3回では、正式オープン後のパーチで何が起きているのか、井上さんに聞きました。

 

 

正式オープン後のパーチ。

子どもたちはそれぞれのペースで過ごしています

想定以上の利用希望。正式オープンから20日で15人に

 

「予定していたよりも人が入っています。思っていた以上に需要がありました」

取材時点で、パーチのフリースクール会員は15人。定員20人に対し、体験を待っている子どもも3人いるといいます。

利用する子どもたちは、小学校中学年から中学生まで。小平市や東大和市だけでなく、国分寺市、立川市、武蔵村山市など、周辺地域からも通っています。

 

井上さんが予想していたのは、比較的おとなしく、静かに過ごす子どもたちの姿でした。

しかし、実際に迎えてみると、その印象は違っていたそうです。

 

「思っていたよりも元気な子が多いんです」

体を動かしたい子もいれば、じっと座って過ごすことが苦手な子もいる。子どもたちの過ごし方は、一人ひとり異なります。

そんな中で井上さんがうれしかったのは、子どもたち自身から届いた言葉でした。

 

「ここがあってよかった」

「楽しい」

 

自宅で過ごす時間が長く、自分の居場所を見つけられずにいた子どもが、そう話してくれたこともあったといいます。

 

「子ども自身からそう言ってもらえるのは、やっぱりうれしいですね。やりがいを感じます」

 

 

子どもたちの希望を受けて新たに用意したギター

自由に過ごすだけではない

「自由に過ごす」だけではなかった。子どもたちの希望から時間割を導入

 

第2回の取材で、井上さんは「自由に、自分らしく過ごしてほしい」と話していました。

当初は、決まった時間割を設けず、それぞれが自由に過ごせる運営を考えていたそうです。ところが、実際に始めてみると、子どもたちから「勉強したい」という希望も出てきました。そこで新たに取り入れたのが、音を出して過ごせる時間と、静かに過ごす時間を分ける仕組みです。

 

約1時間半ごとに時間を区切り、静かな時間には勉強に取り組みたい子が集中できるようにしました。

一方で、学習以外の活動を選ぶ子どももいます。

 

「勉強したい子もいれば、遊びたい子もいますから」

 

全員に同じことをさせるのではなく、それぞれの希望をできる限り尊重する。

自由な居場所を目指していたパーチが、実際に子どもたちを迎えたことで、過ごし方の選択肢を増やしているのです。

学習についても、全員に同じ目標を設定するわけではありません。

どの程度勉強するかは、本人、保護者、井上さんが相談しながら決めています。

自由に過ごせることと、学びたい気持ちに応えること。その両方を実現するために、運営方法を少しずつ変えています。

 

 

教室で飼育されているハムスターのケージ

教室での多様な過ごし方

ザリガニの仕掛けづくり、ギター、パズル。子どもたちが広げる活動

 

教室での過ごし方も、当初の想定より多様になっています。

絵を描いたり、パズルをしたり、ギターを弾いたり。ハムスターと触れ合う子もいれば、何もせずゆっくり過ごす子もいます。

ゲームも、単なる遊びではなく、子ども同士が会話するきっかけになっているそうです。

 

子どもたちの希望を受けて、新たにギターを購入するなど、教室に置くものも増えてきました。

活動は室内だけにとどまりません。

あるときは、みんなで100円ショップへ材料を買いに行き、ザリガニなどを捕まえるための仕掛けを制作。実際に仕掛けを設置する活動も行いました。

 

公園へ出かけて、バドミントンやバレーボールをすることもあります。

ただし、井上さんは、全員で同じ活動をすることにはこだわっていません。

「外に行くときも、行きたい子だけでいいと思っています」

外で体を動かしたい子もいれば、室内で過ごしたい子もいる。

その日の気分や興味に合わせて、自分で選べることを大切にしています。

 

前回の取材で語られた「子どもたちと一緒につくる場所」は、壁に何かを飾ることだけではありませんでした。

子どもたちの希望が、新しい道具や活動、そして日々の過ごし方そのものを変え始めています。

 

「こういう子だ」と決めつけない。井上さんが大切にする関わり方
子どもたちを迎える際、井上さんが意識していることがあります。

それは、事前に聞いた情報だけで、その子を判断しないことです。

 

利用前には、保護者から子どもの性格や特性、これまでの状況について話を聞きます。

しかし、その情報を知ったうえでも、先入観を持たずに接するよう心がけているといいます。

「保護者の方から見えている姿と、私たちから見える姿は違うこともありますから」

 

先生と生徒という関係を必要以上に強調することもありません。

「先生と呼ばれなくてもいいんです。人と人として話すようにしています」

子どもが何もしたくないときに、無理に勉強させることもしません。

スマートフォンを使ったり、パズルをしたり。井上さん自身が何かを始めると、興味を持って自然に参加してくることもあるそうです。

 

「分かるところがあると、言いたくなるんですよね」

 

無理に参加させるのではなく、興味を持てるきっかけをつくる。

その積み重ねが、子どもたちとの距離を縮めることにつながっているようです。

 

楽しく学んでもらう難しさと、学校との連携


もちろん、運営を始めてから難しさを感じる場面もあります。

その一つが、勉強に気持ちが向かない子どもへの関わり方です。

「本人が勉強は嫌だと思っているときに、どうやってその子の力につなげていくか。楽しく勉強してもらうのは難しいですね」

 

勉強を強制するのではなく、本人が取り組みたいと思える方法を探す。

これは、教育現場での経験を持つ井上さんにとっても、日々考え続けている課題です。

また、パーチでは、子どもたちが在籍する学校との連携も進めています。

担任の先生と直接話をしたり、学校での出席扱いにつながるよう調整したりする取り組みです。

 

ただし、フリースクールへの通所が自動的に学校の出席扱いになるわけではありません。出席扱いについては、学校側の判断が必要です。

保護者にも、毎日ではないものの、パーチでの子どもの様子を共有しています。

教室の中だけで完結するのではなく、家庭や学校とも関わりながら、一人ひとりの学びと居場所を支えようとしています。

 

 

「80点です」。次に見えてきたのは教室の広さ

 

現在のパーチを100点満点で評価するとしたら、何点でしょうか。

そう尋ねると、井上さんは「80点」と答えました。

「子どもたちへの対応やサービスの内容は100点だと思っています。でも、場所がもっと広ければいいなと」

 

想定以上に利用者が集まり、多い日には10人を超える子どもたちが教室で過ごしています。

活動の幅が広がる一方で、現在の空間だけでは手狭に感じる場面も出てきました。

スタッフについても、現在の2人だけでは十分ではないかもしれないと感じ始めています。

 

ボランティアの活用も考えたものの、継続的に子どもたちを見守る体制をどうつくるかという課題があります。

井上さんは今後、女性スタッフの参加や、近隣への新たな拠点の開設も視野に入れています。

「もう一つ場所があれば、環境を分けることもできますから」

勉強に集中したい子と、体を動かしたい子。それぞれが過ごしやすい環境を用意するために、今とは異なる空間をつくる構想もあるそうです。

 

 

 

まだ出会えていない子どもたちへ


パーチには、小平市、国分寺市、立川市、武蔵村山市など、さまざまな地域から子どもたちが通っています。

一方で、井上さんが意外に感じていることもあります。

東大和市駅の近くにあるにもかかわらず、東大和市からの利用者は、取材時点で15人中1人だったそうです。

 

「まだ知られていないのかもしれません」

 

井上さんは、今も自宅から外に出ることが難しく、学びや人との関わりを求めている子どもたちがいるのではないかと考えています。

「ここなら行ってみたいと思ってもらえる場所にしたいんです」

現在の利用者だけでなく、まだパーチと出会っていない子どもたちに、どうすればこの場所の存在を届けられるのか。

 

それも、正式オープン後に見えてきた次の課題です。

 

「未完成」の意味が変わり始めた


9月の取材で井上さんが語った「あえて未完成にした場所」。

その後、壁に大きな装飾が増えたわけではありません。

しかし、子どもたちが来るようになって、教室の中では確かな変化が起きています。

 

自由な時間だけでなく、静かに勉強できる時間が生まれました。

ギターやパズルなど、子どもたちの希望に応じて新しいものが増えました。

教室の外へ出かける活動も始まりました。

 

そして、利用者が増えたからこそ、広さやスタッフ体制という新たな課題も見えてきました。

最初に考えていた通りに進めるのではなく、目の前の子どもたちに合わせて変えていく。

パーチは、完成した場所を提供するのではなく、利用する子どもたちとともに形を変え続けています。

 

「このまちで、はじめる。」

第3回で見えてきたのは、オープンという目標を達成した後に始まった、もう一つの挑戦でした。

取材先


学び伴走型フリースクール「パーチ」

所在地:東京都小平市小川町1-73-3 浅野屋ビル3階
アクセス:西武拝島線「東大和市駅」から徒歩約2分
プレオープン:2026年9月14日
正式オープン:2026年10月1日

取材日:2026年10月21日
取材・撮影:まいぷれ東村山・小平・東大和 編集部

※記事中の利用人数や運営状況は、取材時点の情報です。

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第1回|学校に行けなくても、学ぶ機会はなくさない。パーチ井上さん、東大和市駅前への挑戦

第2回|東大和市駅前のフリースクール「パーチ」がプレオープン。あえて未完成にした理由

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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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