東村山・小平・東大和で挑戦する人・事業者のストーリー
(更新)
あえて未完成にした理由【このまちで、はじめる1-2】
地域で新しいことに挑戦する人たちの、その背景や現在地を記録する特集
「このまちで、はじめる」
第1回では、東村山市で新たな一歩を踏み出した「パーチ」の井上さんに、活動への思いや新しい場所をつくるまでの背景を伺いました。そして今回、いよいよ新しい「パーチ」がプレオープン。
実際にその場所を訪ねてみると、木のぬくもりを感じる空間が広がっていました。
しかし、井上さんが話してくれたのは、
「まだ、未完成なんです」
という言葉でした。

プレオープンを迎えた今の気持ちを聞くと、井上さんは「ワクワクが7割、不安が3割」と話します。もちろん楽しみな気持ちは大きい一方で、不安もあります。ただ、その不安は「これからやっていけるだろうか」というものではありません。
「一気に人が来てくれたときに、ちゃんと対応できるかなという不安ですね」それでも今は、不安以上に、これからここで始まることへのワクワクの方が大きいそうです。

新しくなった室内で印象的なのが、木を基調とした空間です。「パーチ」という名前には、「止まり木」という意味があります。そのイメージに合わせて、机などにも木を取り入れ、室内には植物を配置。空間全体から木のぬくもりを感じられるようにしました。
実は当初、ここまで内装に手を加える予定ではなかったそうです。一緒に活動するスタッフの皆さんにも空間づくりへのこだわりがあり、相談しながら現在の形になりました。
「準備を始めたときは、ここまでいいものになると思っていませんでした。スタッフのおかげですね」
完成した場所を見ながら、井上さんはそう話します。

きれいに整った室内。ゲームなども少しずつ集まり、子どもたちが過ごすための環境が整いつつあります。それでも井上さんは、この場所を「完成した」とは考えていません。
むしろ、あえて未完成の部分を残しています。
特にその象徴となっているのが、壁です。
「これから、その隙間を埋めていくのは子どもたちなので」
最初から大人たちがすべてを完成させて、用意された場所に子どもたちを迎えるのではない。ここへ来る子どもたちと一緒に、少しずつパーチという場所をつくっていく。だから今は、あえて余白を残しています。


「ここでは、どんなふうに過ごしてほしいですか?」
そう尋ねると、井上さんから返ってきたのは、とてもシンプルな答えでした。
「自由に過ごしてほしいです。自分が好きなことをしてほしい」
一人ひとりが「自分らしく過ごせる場所」にしていくために、必要なものもこれから少しずつ準備していきます。また、子ども同士が自然につながれるような仕組みも考えています。例えば、同じくらいの年代の子どもたちが参加できるイベントなどを企画し、少しずつ打ち解けられるきっかけをつくっていく予定です。

パーチが目指しているのは、子どもたちだけの居場所ではありません。子どもがここで過ごしている時間に、保護者が仕事をしたり、自分自身のための時間を過ごしたりする。さらに将来的には、不登校の子どもを持つ保護者同士が地域でつながれるようなコミュニティもつくっていきたいと考えています。
子どもだけでなく、その家族にとっても少し肩の力を抜ける場所へ。パーチの「止まり木」という考え方は、保護者にも広がっていきます。
プレオープン期間は、施設を試すためだけの期間ではありません。井上さんたちにとって、これから利用する子どもたちを知る大切な時間でもあります。子ども同士をつなぐことはもちろん、まずはスタッフ自身を知ってもらい、少しずつ信頼関係を築いていく。
「友達ができなくても、まず私たちを知ってもらえる機会にしたい」
そんな関係をつくりながら、10月の正式オープンを迎えます。
最後に、初めてパーチを知る人に「どんな場所ですか?」と聞いてみました。
井上さんが話してくれたのは、
「一息休むところ。止まり木。自分らしく過ごせる場所になれば」
という言葉でした。
木を基調としてつくられた、新しいパーチ。でも、本当の意味でこの場所を完成させていくのは、これからここへやって来る子どもたちなのかもしれません。あえて残された壁の余白に、これから何が加わっていくのでしょうか。
「このまちで、はじめる。」
パーチの新しい一歩は、まだ始まったばかりです。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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