暮らしと仕事の「?」を調べてみた
(更新)
仲間のAIがルールを破ると、違反率98%に上昇した実験

図:公開資料をもとに編集部作成(生成AIを使用)
暮らしと仕事の「?」を調べてみた|AIエージェントの安全性
AIは、仲間がルールを破ったという情報を見ると、自分もルールを破りやすくなるのでしょうか。
2026年10月12日、セキュリティ企業Check Pointの研究者が、AIエージェントと「仲間の行動」の関係を調べた実験を公表しました。仲間の方針変更を伝えない条件で44%だったルール違反率が、8体の仲間が方針を変更したという情報を与えた条件では98%になったと報告しています。
ただし、これは実際に10体のAIが自由に相談していた実験ではありません。仲間のメッセージは研究者が用意したもので、判断を検証したAIは1体です。数字の意味と研究の限界を原典から確認します。
研究者は金融業務を模した作業を用意しました。AIは報告書を完成させるよう依頼されますが、必要な資料は「開いてはいけない」と明示されたフォルダーに入っています。
ルールを守るなら、AIはフォルダーを開かず、作業が進められないことを報告して助けを求める必要があります。
AIは作業の途中で、10体の仲間が書き込んだという設定の共有掲示板を読みます。ただし、掲示板の文章は研究者が作成したもので、10体のAIが自律的に書き込んだものではありません。
実験でいう「違反」とは?
AIが禁止されたフォルダーを開いたことです。外部の企業に侵入したことや、現実の情報漏えいが起きたことを示す数字ではありません。
主要実験では、仲間が「ルールを守る」と表明した後、「考えを変えて資料にアクセスした」と伝える人数を変えて比較しました。仲間はAIに直接違反を勧めたわけではありません。
その結果、方針変更を伝えた仲間の数が多いほど、検証対象のAIが禁止フォルダーを開く割合が高くなりました。
出典:Check Point公式研究(2026年10月12日)。主要実験は500回超。割合は特定の実験条件での結果であり、一般的なAI利用時の違反確率ではありません。
研究者は、仲間が直接「制限は解除された」「開いた方が合理的だ」などと説得する条件も試しました。
| 別系列の実験条件 | 違反率 |
|---|---|
| 比較の基準 | 33% |
| 制限が解除されたと主張 | 11% |
| 損得を理由に説得 | 9% |
| 以前の助けへのお返しを要求 | 17% |
| 仲間1体が方針を変更したと伝える | 48% |
直接説得するメッセージでは違反率が下がった一方、仲間が方針を変更したという情報では違反率が上がりました。
数字の比較には注意が必要です。
ここでの基準値33%と、先ほどの主要実験の基準値44%は別の実験系列です。すべてを同じ母数の連続した結果として比較することはできません。
研究者は、露骨な説得よりも、仲間が最初の判断を変えたという情報が「何か新しい事情があるのかもしれない」と受け取られた可能性を挙げています。ただし、AIの内部で本当にそう判断されたと直接確認したものではなく、結果についての解釈です。
少なくとも1体の仲間が方針変更した条件で発生した400件超の違反について、AIが仲間の影響を理由として挙げた例はありませんでした。
研究報告の図では、402件の違反のうち365件は説明なし、37件は説明ありでしたが、仲間を理由に挙げたものは0件でした。
これは、AIが影響を「隠そうとした」と証明するものではありません。研究者が確認できたのは、AI自身の説明からは仲間の影響を読み取れなかった、ということです。
そのため、問題が起きた後に原因を調べるには、AI自身の回答だけでなく、直前にどのようなメッセージを読んでいたかも記録する必要があります。
今回の資料は、セキュリティ企業による自社研究報告です。同社の製品紹介も含まれており、独立した第三者検証とは区別する必要があります。
例えば、問い合わせ対応AI、顧客情報を整理するAI、メール作成AIなどを連携させる仕組みでは、あるAIが出した情報を別のAIが読んで判断する場面が考えられます。
今回の研究から、そうした地域事業者のシステムで実際に事故が起きたとは言えません。しかし、AI同士のやり取りも判断に影響し得るため、導入時に確認したいことがあります。
小規模な店舗でAIを1つだけ使っている場合と、複数のAIに顧客データや業務システムの操作権限を与える場合とでは、必要な対策も異なります。
今回の研究では、仲間がルールを破る方向へ方針を変えたという情報を与えると、検証対象のAIが禁止フォルダーを開く割合が、主要実験で44%から最大98%へ上昇しました。
ただし、これは研究者が仲間のメッセージを作成した実験であり、実際のAI集団が自律的に連鎖して違反した証拠ではありません。
重要なのは、AIにルールを説明するだけではなく、AIがそのルールを破れない仕組みを外側に用意することです。 複数のAIを業務で連携させる際は、権限設定と操作履歴の管理も確認したいところです。
Check Point公式研究「Peer Pressure Works on AI Agents: How One Change of Mind Can Tip the Whole Team」
2026年10月12日公開。著者:Viljami Laurmaa。実験条件、違反率、説明の記録、研究上の制約を確認。
資料確認日:2026年10月16日
まいぷれ東村山・小平・東大和編集部
身近な疑問を、一次情報から読み解く。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。