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暮らしと仕事の「?」を調べてみた

「AIが銀行をハッキング?

(更新)

韓国政府が「AI使用の兆候」を認めたサイバー攻撃」

図:公開資料をもとに編集部作成(生成AIを使用)

AIが、実際の銀行へのサイバー攻撃に使われ始めている?

 

生成AIやAIエージェントの能力が高まるなか、これまで研究機関などでは、AIが脆弱性を探したり、サイバー攻撃の一部を自動化したりできる可能性が検証されてきました。では、それが研究ではなく、実際の金融機関を狙った攻撃で使われたとしたら。

 

韓国で今、その可能性について政府と警察による調査が進んでいます。

 

2026年10月6日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は閣議で、最近相次いでいる金融機関などへのサイバー攻撃について、「一部のハッキングでは人工知能(AI)が活用された兆候も現れている」との認識を示しました。

 

大統領は関係当局に対し、事件の経緯を迅速かつ明確に把握するとともに、被害を最小限に抑えるため必要な人員や資源を投入するよう指示しています。さらに、AIによって高度な専門能力を持たない人でもサイバー攻撃を行いやすくなり得るとして、韓国社会のサイバーセキュリティ体制そのものを「AI時代」に合わせて転換する必要性にも言及しました。

 

何が起きているの?


韓国では9月末から、Shinhan Bank(新韓銀行)、KB Kookmin Bank(KB国民銀行)、Hana Bank(ハナ銀行)など複数の金融機関で、不正アクセスや個人情報流出が相次いで確認されています。10月2日には韓国の金融委員会(FSC)が金融機関などとの緊急会議を開催。各社に、外部からアクセスできるシステムの脆弱性やアクセス管理体制などを緊急点検するよう求めました。

 

Hana Bankでは、氏名、ID番号、電話番号など89人分の個人情報が流出したことが確認されています。一方、Reutersによると、この事案では金融情報の流出は確認されていません。

 

その後も政府レベルで対応が続き、警察も商業銀行を狙った一連の攻撃について本格的な捜査に入っています。

 

なぜ「AIが使われた」と疑われている?


注目されている手掛かりの一つが、攻撃に関連するとみられるサーバーから見つかった文字列です。韓国のセキュリティ専門家の分析では、一部のWebサーバーのHTMLタイトルから、

 

「ARTEX―自主渗透测试控制台」

 

という中国語を含む文字列が確認されました。これはおおむね「ARTEX―自律ペネトレーションテスト・コンソール」を意味します。ARTEX AIは、大規模言語モデル(LLM)や複数のAIエージェントを利用して、対象に関する情報収集、脆弱性探索、攻撃経路の計画、セキュリティツールの実行、脆弱性の検証などを自動化するオープンソースのペネトレーションテスト用システムです。

 

本来、ペネトレーションテストは、自分たちのシステムへ実際に攻撃を試みることで弱点を調べるセキュリティ検査です。こうした仕組みが悪用されれば、これまで人間が一つずつ行っていた脆弱性探索や試行の一部をAIによって高速化・自動化できる可能性があります。

 

  • どのAIモデルが使われたのか
  • AIが攻撃のどの工程を担当したのか
  • AIエージェントがどこまで自律的に動いたのか
  • 人間の攻撃者がどの程度操作していたのか
  • 複数の金融機関への攻撃が同一の攻撃者によるものなのか

といった情報は、まだ確定していません。

 

現在確認できるのは、複数の金融機関が実際に攻撃を受け、AI攻撃ツールとの関連を疑わせる痕跡が見つかり、韓国大統領も「AIが活用された兆候」があると公に認め、政府・警察が調査を進めているというところまでです。

 

私たちにも関係するの?


今回注目したいのは、AI研究所の実験環境ではなく、私たちの個人情報を扱う実際の金融機関が攻撃対象になっていることです。さらに、狙われる可能性があるのはインターネットバンキングなど銀行の「本丸」だけではありません。韓国で報じられている事案では、融資担当者やローン募集人などが利用する周辺システムから情報が流出したケースもあります。

 

会社の予約システム、取引先向けサイト、従業員向けWebサービス、古い業務システム。こうした外部につながったシステムのどこかに弱点があれば、AIによって大量の対象を調べたり、攻撃方法を試したりする作業が効率化される可能性があります。

 

AIは「攻撃する側」だけの道具ではない

 

一方で、AIそのものを危険視するだけでは問題の全体像を捉えられません。李大統領も、サイバー攻撃がAIによって高度化する一方で、防御側でもAIの導入を急ぐ必要があるとの考えを示しています。

AIによって大量のアクセスを分析したり、通常とは異なる挙動を早期発見したりできれば、防御側の能力も高められる可能性があります。

 

今後問われるのは、

「AIを使うか、使わないか」ではなく、「AIによって攻撃が自動化されることを前提に、どう守るのか」

なのかもしれません。

 

現時点で分かっていること・分かっていないこと


今回の韓国の銀行へのサイバー攻撃では、実際の個人情報流出が確認されています。そして2026年10月6日、韓国大統領が、一部の攻撃について「AIが活用された兆候」があると公に認めました。

 

一方で、ARTEX AIを含め、具体的にどのAIが使われ、どの工程を実行したのかはまだ確定していません。政府首脳が実際の金融機関への攻撃についてAI利用の可能性を公に認め、警察が捜査を進めていることは、AIとサイバーセキュリティを考えるうえで重要な動きです。

 

今後、韓国警察や金融委員会などの調査によって、使用されたツールや侵入経路、AIが担った工程が明らかになれば、この事件の意味も大きく変わる可能性があります。編集部では引き続き、公式調査の続報を確認していきます。

 

主な確認資料

 

韓国・金融委員会(FSC)|2026年10月2日

最近発生する金融圏への侵害脅威に綿密に対応
https://www.fsc.go.kr/no010101/87869
韓国・金融委員会(FSC)|10月4日開催・10月6日公表
「全金融圏が非常な警戒心を持って侵害脅威に対応」
https://www.fsc.go.kr/no010101/87876
韓国・金融委員会(FSC)公式資料
Reuters|2026年10月6日
「South Korea's Lee says AI appears to have been used in bank hacks」
李在明大統領が、一部の銀行へのハッキングでAIモデルが使用されたとみられると閣議で発言
https://www.reuters.com/world/south-koreas-lee-says-ai-appears-have-been-used-bank-hacks-2026-10-06/
聯合ニュース(Yonhap)|2026年10月4日
李大統領が、Hana Bank、KB Kookmin Bank、Shinhan Bankなどで相次いだ個人情報流出・ハッキングについて徹底調査を指示

https://en.yna.co.kr/view/AEN20261004002151315

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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