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暮らしと仕事の「?」を調べてみた

AIエージェント「ARTEX」で数百組織を攻撃

(更新)

MicrosoftがStorm-0940の活動を報告

図:公開資料をもとに編集部作成(生成AIを使用)

暮らしと仕事の「?」を調べてみた|まいぷれ東村山・小平・東大和編集部

AIエージェントで数百組織を攻撃、3時間未満で特権アクセスも――Microsoftが中国系攻撃グループの活動を報告

15万件以上の認証失敗、2,250以上の顧客環境へのアクセス試行。数字の意味と、実際に確認された侵害を調べました。

調査報告公表日:2026年10月21日
資料確認日:2026年10月25日

AIエージェントを使えば、サイバー攻撃はどこまで速くなるのでしょうか。

2026年10月21日、Microsoftのセキュリティ研究部門が、中国政府と関連すると評価する攻撃グループ「Storm-0940」による大規模なサイバー攻撃の調査結果を公表しました。攻撃には「ARTEX」というAIエージェント基盤が使われ、世界の数百組織が標的になっていました。

複数の事例で、標的を狙い始めてから3時間未満でクラウド環境の特権アクセスを取得していたと報告されています。

これは実際の攻撃活動の観測結果ですが、すべての標的で侵入に成功したわけではありません。AIが人間の指示なしにすべてを実行したと確認されたわけでもありません。

数百組織攻撃対象(侵害成功数ではない)
15万1,000件以上認証失敗(10月10~14日)
3時間未満複数事例での特権アクセス取得まで

そもそもARTEXとは?

ARTEXは、AIを使ってセキュリティ検査や侵入テストの作業を自動化するソフトウェア基盤です。複数のAIエージェントを組み合わせ、対象システムの調査や弱点の分析を進めます。本来は許可された安全性検査にも利用できますが、攻撃者が悪用すれば攻撃の自動化にも使われます。Microsoftによると、Storm-0940は遅くとも2026年9月にはARTEXを利用していました。対象には政府、金融、製造、エネルギー、ソフトウェアなど幅広い分野が含まれます。

15万1,000件以上の認証失敗。何が起きていた?

2026年10月10日から14日にかけて、攻撃者はMicrosoft 365やExchange Onlineに対し、複数アカウントへパスワードを試す「パスワードスプレー攻撃」を行いました。10月11日には1日で11万1,000件を超える認証失敗が集中しました。ただし、この認証攻撃についてMicrosoftは成功したログインを確認していません。認証トークンの発行、Microsoft Graphへのアクセス、ディレクトリ変更も確認されていませんでした。15万1,000件以上は侵入成功件数ではありません。

攻撃期間2026年10月10~14日
対象組織8組織
対象アカウント327アカウント
認証失敗15万1,000件以上
ピーク時1分間に2,900件以上の認証失敗

では、実際に侵入された組織はあった?

Microsoftは、ARTEXを利用した攻撃のうち、複数の組織でクラウド環境の特権アクセスが取得されたと報告しています。複数の事例では、標的を狙い始めてから3時間未満で特権アクセスを取得しました。10月中旬には、クラウドバックアップサービス「ConnectWise Cloud Backup」を経由した別の攻撃経路も確認されています。

外部のバックアップサービスが侵害の入口に

ConnectWise Cloud BackupはMicrosoft 365などのデータをバックアップするサービスで、以前はSkyKickという名称でした。こうしたサービスには顧客側のクラウド環境への一定のアクセス権限が付与されます。ConnectWiseは関連アプリケーションの認証情報が不正に取得されたと公表しました。MicrosoftはStorm-0940がこの侵害に関与したと評価しています。攻撃者は取得したアプリケーションの認証情報を利用して顧客のMicrosoft 365環境へのアクセスを試みました。

2,250以上の顧客環境にアクセスを試行

Microsoftによると、攻撃者はARTEXを利用し、2,250以上の顧客環境へのサインインを試みました。これは侵入に成功した顧客数ではありません。複数の顧客環境で実際の認証やその後の不審な操作が確認された一方、すべての対象環境で不正アクセスが成功したわけではありません。

なぜパスワードを知らなくてもアクセスできた?

バックアップサービスなどの外部アプリケーションは、管理者が許可した権限を使って継続的にデータへアクセスする場合があります。今回、攻撃者はこの仕組みを悪用しました。利用者本人のパスワードを直接盗まなくても、信頼された外部アプリケーションの認証情報を使えば、顧客環境にアクセスできる場合があります。

侵入後には、どのような操作が行われた?

Microsoftは複数の顧客環境で、Microsoft Graphを利用した情報収集、アプリケーションの認証情報変更、権限拡大につながる操作などを観測しました。Microsoft GraphはMicrosoft 365のユーザー、グループ、メール、ファイルなどをプログラムから操作する仕組みです。攻撃者が新しい認証情報を追加した場合、最初の鍵を無効化しても別の経路でアクセスが続く可能性があります。そのため顧客側に不正な設定が残っていないかの確認も重要です。

「3時間未満」は何を意味する?

Microsoftは、複数の攻撃で標的を狙い始めてからクラウド環境の特権アクセス取得まで3時間もかからなかったと説明しています。特権アクセスは通常の利用者より強い管理権限を持つ状態です。ただし、すべての攻撃がその時間内に成功したわけではありません。AIを使わなかった場合と比較して何時間短縮されたかを測定した実験結果でもありません。

AIはどこまで攻撃を自動化していた?

MicrosoftはARTEXが攻撃の調査や認証試行、クラウドアプリケーションの悪用などを高速化したと説明しています。一方、各段階で人間がどのような指示を与え、AIがどこまで独立して判断したかは公開資料からすべて確認できません。AIが自分の意思で攻撃を始めたと確認されたわけではなく、人間の攻撃者がAIエージェントを悪用した事例です。

中国政府が攻撃を指示したと確認されたの?

MicrosoftはStorm-0940を中国国家と連携する攻撃グループと評価しています。同グループは2021年から活動が確認され、従来からパスワードスプレー攻撃などを利用してきたと説明しています。ただし、今回の資料から中国政府の特定機関が個々の攻撃を直接指示したと断定することはできません。

情報流出はどこまで確認された?

Microsoftは複数の顧客環境で不正な認証やその後の操作を確認しています。ただし、認証成功だけで顧客データへのアクセスや外部流出が発生したと判断することはできません。ConnectWiseは既存のバックアップ保管データについて侵害の兆候を確認していないと説明しています。これは顧客のMicrosoft 365環境がすべて安全だったことを意味しません。顧客全体の情報流出件数や流出量は今回の資料では確定できません。

ConnectWiseはどう対応している?

ConnectWiseは影響を受けたアプリケーションの接続を停止し、認証情報の変更や安全性確認を進めています。10月24日付の公式更新では既存のバックアップデータは暗号化・隔離された状態で保全され、侵害の兆候は確認されていないと説明しています。復旧は段階的に進める方針で、正式な案内まで影響を受けた接続を再開しないよう求めています。10月26日から段階的な再接続手続きを始めることを目標としていますが、確定した復旧日ではありません。

地域の事業者や自治体にも関係する?

東村山・小平・東大和の事業者や自治体が今回攻撃を受けたと確認されたわけではありません。ただし、メール、ファイル、会計、予約管理などの外部サービスに強い権限を与えている場合、提供元の侵害が自社の環境にも影響する可能性があります。外部アプリに与えた権限、不要な連携、管理者権限を持つアプリ、認証情報の変更通知、連携停止と復旧の手順を確認することが役立ちます。

  • 外部サービスに与えたアクセス権限を確認する
  • 利用していない連携アプリを見直す
  • 管理者権限を持つ外部アプリを把握する
  • 認証情報や権限変更を検知できる仕組みを設ける
  • 外部サービスの侵害時に連携を停止・調査できるようにする

編集部まとめ

今回確認できたこと

Microsoftは、中国政府と関連すると評価するStorm-0940がARTEXを利用し、数百組織を標的に攻撃したと報告しました。10月10~14日の15万1,000件以上の認証失敗では成功したログインは確認されていません。一方、別の経路ではConnectWiseのアプリケーション認証情報を悪用した不正操作が複数の顧客環境で確認されました。3時間未満で特権アクセスを取得した事例も報告されています。

まだ分からないこと

攻撃対象のすべてで侵入に成功したわけではありません。AIが各段階でどこまで自律的に判断したか、顧客全体でどれだけの情報が流出したかは確定できません。

どう受け止めればよい?

AIが自分の意思で暴走した事件ではなく、人間の攻撃者がAIエージェントを使い、既存の攻撃を高速化した事例です。外部サービスに与えた権限が別の組織への侵入経路になり得ることも示しています。

主な確認資料・情報源

Microsoft Security Research / Microsoft Threat Intelligence(2026年10月21日)
AI-driven, large-scale nation-state campaign using ARTEX enables supply chain compromise

ConnectWise(2026年10月16日初報、10月24日更新)
公式セキュリティアドバイザリー

※資料確認日:2026年10月25日。Microsoftの調査結果とConnectWise自身の事故報告を区別して整理しています。復旧状況は変更される可能性があります。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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