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暮らしと仕事の「?」を調べてみた

AIを悪用したランサムウェア攻撃とは?8,257件の会話記録を調査

(更新)

犯罪者は普通のAIをどう使っていた?

図:公開資料をもとに編集部作成(生成AIを使用)

暮らしと仕事の「?」を調べてみた|まいぷれ東村山・小平・東大和編集部

犯罪者は普通のAIをどう使っていた?――7台の攻撃サーバーから8,257件の会話記録、ランサムウェア攻撃の実態が判明

原典公表:2026年10月20日/更新:10月23日|資料確認:2026年10月23日

犯罪者がAIを使ってサイバー攻撃をする。

そんな話を聞くと、特別に作られた危険なAIを想像するかもしれません。

しかし、2026年10月20日にセキュリティ企業SOCRadarが公表した調査では、ランサムウェア犯罪組織の関係者が、一般に提供されている商用AIモデルを攻撃活動に組み込んでいたことが報告されました。

研究者が調査したのは、攻撃者の設定ミスによって外部からアクセスできる状態になっていたサーバーです。そこには、AIとの会話履歴、攻撃用プログラム、標的企業の情報、恐喝のための文書などが残されていました。

確認されたAIとのやり取りは、133セッション、8,257メッセージに上ります。さらに、被害者の端末で実際にファイルが暗号化されていることを示す記録も発見されました。

犯罪者は、AIにどこまで仕事を任せていたのでしょうか。SOCRadarの調査報告を確認しました。

攻撃者のサーバーが、外部から見える状態になっていた

調査のきっかけは、2026年9月下旬に見つかった1台のサーバーでした。

SOCRadarの研究チームは、ランサムウェア犯罪組織「INC」と「The Gentlemen」の関係者が利用していたとみられるサーバーで、内部のファイルが外部から閲覧できる状態になっていることを発見しました。

そこには、AIとの会話記録や、攻撃活動の進捗を管理する情報、攻撃用プログラム「Phantom」のソースコードなどが保存されていました。

研究者は、そのサーバー内の設定情報や記録を調べ、さらに6台の攻撃者側サーバーを特定しました。合計7台のサーバーから、犯罪者の活動を詳しく分析できる資料が見つかったのです。

7台発見された攻撃者側のサーバー
8,257件AIとのメッセージ記録
133AIとのセッション数
62組織記録に登場する標的・被害組織

出典:SOCRadarの調査報告。8,257件は攻撃成功件数ではなく、AIとのメッセージ数です。

犯罪者が使っていたのは、普通の商用AIだった

今回の調査で注目したいのは、攻撃者が特別な違法AIだけに頼っていたわけではないことです。

SOCRadarによると、攻撃者は「OpenCode」というAIを利用した開発ツールを操作画面として使い、「OpenRouter」というサービスを通じて商用AIモデルを利用していました。

記録には、AnthropicのClaude系モデルやMoonshot AIのKimi系モデルの使用が含まれています。

ただし、これらのAI企業が犯罪行為を認めたり、攻撃に協力したりしていたという意味ではありません。一般に提供されているAIサービスを、犯罪者側が悪用していたということです。

攻撃者がAIに担当させていたのは、侵入方法の検討、作業用プログラムの作成、取得した情報の整理、攻撃結果の分析、恐喝文書の下書きなどでした。

一方、SOCRadarが確認した運用では、人間の攻撃者がAIに指示を出し、各段階の実行を承認していました。AIが人間の指示なしに勝手に犯罪を始めたという事例ではありません。

AIが拒否すると、攻撃者は依頼文を書き換えていた

調査記録には、AIが攻撃に関係する要求を拒否した際の対応も残されていました。

攻撃者は、要求が拒否されると、正規のセキュリティ評価を行っているように見せかける文章に書き換え、再びAIに依頼していました。つまり、AIの安全制限を回避しようとする試みが記録されていたのです。

ただし、SOCRadarの公開資料からは、書き換えによって何回中何回の要求が通ったのか、正確な成功率は分かりません。また、今回の記録だけから、商用AI全般の安全対策が機能していないと結論づけることもできません。

分かっているのは、犯罪者がAIの拒否に対応しながら、攻撃活動を続けようとしていたということです。

AIは攻撃のどの段階に使われていた?

SOCRadarが確認した記録では、AIが一つの作業だけを担当していたわけではありません。攻撃の準備から侵入後の情報整理、恐喝の準備まで、複数の段階に利用されていました。

攻撃の段階AIの利用が確認された内容
標的の調査企業情報やシステム情報の整理
攻撃の準備プログラムや実行手順の作成
侵入後の作業取得情報や認証情報の整理
攻撃の管理標的ごとの進捗や記録の管理
恐喝の準備被害企業に送る文書や連絡方法の検討

今回の調査では、「Phantom」と呼ばれる独自の攻撃用フレームワークも発見されています。

SOCRadarによると、この仕組みには複数の機能が組み込まれており、AIを利用して攻撃作業を進めるための基盤として使われていました。

ただし、「自律型」と呼ばれる仕組みがあったからといって、すべての攻撃が人間の承認なしに実行されたという意味ではありません。

実際にファイルを暗号化した記録も

ランサムウェアとは、パソコンやサーバー内のファイルを暗号化するなどして利用できなくし、復旧や情報の非公開と引き換えに金銭を要求する攻撃です。

今回の調査では、6組織向けに準備された46件の暗号化プログラムが見つかりました。これらは、標的ごとに識別情報や暗号化に関する設定を変えて作られていました。

さらに、9月30日付の記録には、被害者の端末上で暗号化プログラムが動作していることを示す画面が含まれていました。これは、攻撃の準備だけでなく、実際の暗号化活動に結び付く証拠です。

一方、10月1日に予定されていた複数組織への攻撃が、すべて実行されたと確認されたわけではありません。46件のプログラムが見つかったことと、46件の被害が発生したことは別です。

62組織すべてが被害を受けたわけではない

調査で見つかった記録には、62組織の名前が含まれていました。しかし、そのすべてで侵入や情報漏えいが確認されたわけではありません。

SOCRadarは、記録された活動の進み具合によって、62組織を次のように分類しています。

62組織のうち36組織は米国に所在していました。業種では、製造・産業・エネルギー関連、医療・医薬品関連が比較的多く含まれています。

ただし、これらは調査で確認された攻撃者側の記録に基づく分類であり、62組織すべてについて被害状況が独立して確認されたわけではありません。

AIは恐喝文書まで作っていた

今回の調査では、攻撃者がAIを恐喝活動にも利用していたことが報告されています。

例えば、被害企業の財務情報などから支払い能力を推測し、どの程度の金銭を要求するかを検討していました。また、企業の経営者や関係者に送る文章、電話で圧力をかけるための台本なども作成していました。

これは、ランサムウェア攻撃が単にファイルを暗号化するだけの犯罪ではないことを示しています。情報を盗み、その公開をちらつかせて金銭を要求する手法も含まれていたのです。

ただし、実際に身代金が支払われたことを示す記録は、今回の調査では確認されていません。

地域の中小企業にも関係する?

今回の調査で、東村山・小平・東大和の事業者が攻撃されたと確認されたわけではありません。それでも、地域の事業者にとって参考になる点があります。

特に注意したいのは、IT管理を外部に委託している企業も、委託先の管理システムを通じて影響を受ける可能性があるということです。

例えば、店舗や中小企業がWebサイトや社内パソコンの管理を外部業者に任せている場合です。委託先が複数の企業のシステムを管理していれば、その管理用アカウントや遠隔操作ツールが狙われる可能性があります。

SOCRadarの調査では、外部のIT管理事業者が利用する遠隔管理システムや認証情報も攻撃対象になっていました。

そのため、地域の事業者は、次の点を確認しておくとよいでしょう。

  • 委託先の管理権限:外部業者がどのシステムにアクセスできるか把握する。
  • 多要素認証:管理用アカウントに追加の認証を設定する。
  • ソフトウェアの更新:遠隔管理ツールやVPNなどを適切に更新する。
  • パスワードの使い回し防止:一つの認証情報が漏れても被害が広がりにくい状態にする。
  • バックアップの保護:攻撃者がバックアップまで削除・暗号化できないようにする。

今回の事案は、AIを使った攻撃だけに対応すればよいという話ではありません。既存のシステム管理や認証情報の扱いを見直すことも重要です。

編集部まとめ

今回確認できたこと

SOCRadarは2026年10月20日、ランサムウェア犯罪組織「INC」と「The Gentlemen」の関係者が利用していたとみられる7台の攻撃者側サーバーを調査した結果を公表しました。

そこには、133セッション・8,257件のAIとのやり取りや、攻撃用プログラム、標的組織の情報、恐喝に関する記録などが残されていました。また、実際の被害端末で暗号化が進行していることを示す記録も確認されています。

まだ分からないこと

記録に登場する62組織すべてが被害を受けたわけではありません。また、準備された46件の暗号化プログラムがすべて使われたか、INCとThe Gentlemenが正式に統合されていたか、実際にどの程度の金銭が支払われたかについても確認できていません。

どう受け止めればよい?

今回の事案は、AIが自ら犯罪を始めた事故ではありません。人間の犯罪者が、一般に提供されているAIを攻撃活動の一部に組み込み、作業を進めていた事例です。

AIが使われることで攻撃の効率が変わる可能性はありますが、地域の事業者にとっては、認証情報の管理や外部委託先の安全対策など、基本的な対策を確認することが重要です。

主な確認資料・情報源

SOCRadar Threat Research Unit(2026年10月20日公表、23日更新)

INC and The Gentlemen Ransomware: Exposed AI Infrastructure

7台の攻撃者側サーバー、AIとの8,257件のメッセージ、62組織の分類、暗号化プログラム、攻撃者の運用構造などを報告した調査資料。

SOCRadar(技術調査報告書の公開ページ)

INC and The Gentlemen Threat Research Report

詳細な技術調査報告書の案内ページ。

※本記事はSOCRadarの公開調査資料をもとに整理したものです。攻撃者側の記録に由来する数字や主張には、第三者による独立検証が行われていない部分があります。記載した商用AIの提供企業が犯罪に協力したことを意味するものではありません。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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