暮らしと仕事の「?」を調べてみた|まいぷれ東村山・小平・東大和編集部
AIは利用者に必要な情報をすべて教えてくれる? WhatsAppで「規制当局を案内しない」隠し指示が発見
2026年10月21日|調査報告:2026年10月19日
AIの相談窓口に困りごとを相談したとき、必要な情報はすべて教えてもらえるのでしょうか。
2026年10月19日、プライバシー関連サービスを提供するRedactは、Meta傘下のメッセージアプリ「WhatsApp」のヘルプページから、AI向けの非表示の指示を発見したと公表しました。
その中には、アカウントを削除できずに困っている利用者に対し、個人情報保護の規制当局への相談を勧めないよう求める指示が含まれていました。
WhatsAppは、これらが自社のサポートAIに向けた指示であり、不具合によってWebページ上に露出したと説明しています。
実際に利用者が必要な情報を教えてもらえなかったのでしょうか。調査報告とWhatsAppの公式プライバシーポリシーを確認しました。
545ページを調べて、102件のAI向け指示を発見
Redactは2026年10月8日、WhatsAppのヘルプページに、通常の利用者には見えないAI向けの文章が含まれていることを発見しました。その後、ヘルプセンターからリンクされている545ページを調査しました。
出典:Redact、2026年10月19日公開。
これらの指示は、通常のWebページ画面には表示されず、ページのコード内に含まれていました。
調査によると、102件の大部分は用語の補足や適切な案内先の指定など、通常のサポート業務に関する内容でした。しかし、その中に利用者の権利に関する情報の案内を制限する指示が見つかりました。
アカウントを削除できない人に「規制当局を案内しない」
特に注目されたのは、WhatsAppのアカウント削除に関するヘルプページです。
電話番号や端末を失い、アカウントを削除できなくなった利用者に対して、AIは一定期間後にアカウントが自動削除されることを案内するよう指示されていました。ここまでは通常のサポート情報です。
しかし、非表示の指示には、個人情報保護当局や規制機関への相談を勧めないよう求める内容も含まれていました。つまり、AIが利用者に案内する選択肢を、あらかじめ限定する内容だったのです。
ただし、実際のサポートAIがこの指示に従い、利用者への案内を省略したかどうかは確認されていません。
法律の話になったら、個人情報保護法にも触れない?
もう一つの指示は、利用者が訴訟や弁護士、裁判などについて言及した場合の対応でした。
この指示では、WhatsAppの利用規約やプライバシーポリシーについて引用・解釈しないことに加え、GDPRなどの個人情報保護法についても言及しないよう求めていました。利用者自身が法律の名前を出した場合にも、その法律を引用・解釈しないという内容です。
企業のサポートAIが、専門家ではないのに法律上の助言を行わないよう制限されること自体には、合理的な理由があります。
しかし、法律の解釈をしないことと、利用者が持つ権利や相談先について一般的な情報を案内しないことは、同じではありません。今回の調査は、その違いを考えさせるものです。
公式プライバシーポリシーには、相談する権利が書かれていた
WhatsAppが一般に公開している欧州向けプライバシーポリシーには、利用者が自分の個人情報について削除を求める権利や、個人情報保護の監督機関へ苦情を申し立てる権利が説明されています。
一方、調査で見つかったAI向け指示には、規制当局への相談を勧めないという内容がありました。
| 公開プライバシーポリシー | 発見されたAI向け指示 |
|---|---|
| 個人情報の削除を求める権利を説明 | WhatsAppが利用者に代わってアカウントを手動削除できるとは案内しない |
| 監督機関への苦情申立ての権利を説明 | 規制当局への相談を勧めない |
| GDPRなどの法制度を説明 | 法的な話題になった場合、GDPRなどを引用・解釈しない |
ただし、個人情報の削除を求める権利と、本人確認ができないアカウントを企業が直ちに削除できるかどうかは別の問題です。そのため、両者が完全に矛盾していると一括りにすることはできません。
一方、監督機関への苦情申立てという選択肢をAIが案内しないよう求める指示は、利用者に提供される情報の範囲を考えるうえで重要です。
WhatsAppは何と説明している?
米国のテクノロジー誌WIREDは、保存されたWebページのコードに含まれていた指示を独自に確認し、WhatsAppに取材しました。
WhatsAppの広報担当者は、これらは同社のAIサポートチャット向けの指示であり、不具合によってヘルプページに表示されていたと説明しています。また、同社は、AIサポートがWhatsAppに関する適切な案内を行い、法律上の助言を提供しないようにすることが目的だと説明しました。
Redactによると、10月15日にはまだ確認できた102件の指示が、10月18日の再確認時には公開ページから削除されていました。
不具合だったと説明されているのは、AI向けの指示が公開ページに露出していたことです。 AIに与える指示そのものが誤りだったと認めたわけではありません。また、公開ページから削除された後、社内のサポートAIに同様の指示が残っているかどうかも分かっていません。
実際にAIが利用者の権利を隠したの?
今回の調査だけでは、そこまで確認できません。
Redactが確認したのは、AIに与えるための指示です。実際のサポートAIとの会話を大量に調べ、規制当局への案内が省略された割合を測定したものではありません。
したがって、「AIが利用者の権利を隠していた」と断定することはできません。
一方で、こうした指示が存在していたことは、AIの回答内容がサービス提供者の設定によって制限され得ることを示しています。また、指示があったからといって、利用者が法律上持っている権利そのものが失われるわけでもありません。
私たちの暮らしや仕事にも関係する?
今回の問題は、WhatsAppだけに限った話ではありません。
今後、企業や自治体の問い合わせ窓口にAIが導入されれば、利用者はAIから案内を受ける機会が増えると考えられます。例えば、商品を返品したい、契約を解除したい、個人情報を削除してほしい、行政の手続きについて相談したいといった場面です。
そのとき、AIが正確な説明をすることはもちろん大切です。しかし、それだけでは十分とは限りません。
これも確認すべき点になります。
東村山・小平・東大和の事業者や自治体で、今回と同様の指示が使われていると確認されたわけではありません。ただし、地域の企業がAI相談窓口を導入する場合にも、回答の正確さだけでなく、案内する窓口や手続きの範囲を適切に設定することが重要です。
利用者側も、AIの案内だけで解決しない場合は、公式の利用規約やプライバシーポリシー、担当窓口、公的な相談機関などを確認することが役立ちます。
編集部まとめ
今回確認できたこと
Redactは、WhatsAppのヘルプページ545件を調査し、80ページから102件のAI向け非表示指示を発見しました。その中には、規制当局への相談を勧めないことや、法的な話題になった場合に個人情報保護法へ言及しないことを求める指示がありました。WhatsAppは、これらが自社のサポートAI向けの指示であり、不具合によって公開ページに露出していたと説明しています。
まだ分からないこと
実際のサポートAIが指示に従って利用者への案内を省略したか、具体的な不利益が発生したかは確認できていません。また、公開ページから削除された後、AIの内部指示が変更されたかどうかも不明です。
どう受け止めればよい?
AIの回答を評価するときは、間違った情報を伝えていないかだけでなく、必要な情報が省かれていないかにも目を向ける必要があります。
AIが何を答えるか。そして、何を答えないように設定されているのか。
今回の調査は、AIによる情報提供の透明性を考えるきっかけになる事例です。
主な確認資料・情報源
- Redact(2026年10月19日)
- WIRED(2026年10月19日)
- WhatsApp(欧州向けプライバシーポリシー)
身近な疑問を、一次情報から読み解く。|まいぷれ東村山・小平・東大和編集部







