暮らしと仕事の「?」を調べてみた
(更新)
主要4社・352件の発表を調べた研究

図:公開資料をもとに編集部作成(生成AIを使用)
Instagramの「ティーンアカウント」、TikTokの「ペアレンタルコントロール」、YouTubeの保護者向け管理機能など、SNS各社は子どもや10代の利用者を守るためのさまざまな機能を導入しています。
しかし、ここで一つ疑問が生まれます。
「安全機能を導入した」という発表と、「その機能によって実際に安全になった」ということは、同じなのでしょうか?主要SNSが公表してきた青少年向け安全対策を分析した研究から、その間にある「確認しにくさ」が見えてきました。
研究は、Renkai Ma氏、Pamela Wisniewski氏らによる「Analyzing Social Media Claims regarding Youth Online Safety Features to Identify Problem Areas and Communication Gaps」です。対象となったのは、YouTube、TikTok、Meta(Instagram・Facebook)、Snapchatという、若者に広く利用されている4つのプラットフォーム。
研究チームは、各社が2019年から2024年までに公開したプレスリリースや安全・ヘルプ関連の記事352件を収集し、青少年向けの安全機能について各社がどのように説明しているのかを分析しました。
論文はACMの「Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction」に2026年5月20日付で正式公開され、CSCW 2026の研究成果となっています。
研究チームは、SNS各社による安全機能の説明について、大きく3つの問題を指摘しています。
1つ目は、「導入した」という説明と、実際に利用できる状態とのずれです。「順次提供する」「テストを開始する」「一部地域で利用できる」といった表現が使われ、その後、いつ・どの地域・どの利用者まで実際に提供されたのかが分かりにくいケースが確認されました。
論文では、Metaが2024年に発表したInstagramの「ティーンアカウント」についても、当初は一部地域で提供し、その後対象を広げるという説明だったことなどが例として挙げられています。そのため研究者は、利用者や保護者、研究者自身が、自分の地域・自分のアカウントでその機能が本当に有効なのかを確認しなければならない場合があると指摘しています。
2つ目は、安全機能がどう動くのかについて、説明が曖昧だったり一貫していなかったりすること。
そして3つ目が、特に重要です。「その機能によって、実際にリスクがどれだけ減ったのか」を判断できる根拠が不足しているケースがあることです。
例えば論文では、YouTubeが過去に新しいコメント分類機能について、従来より多くの問題コメントを検出・削除できると説明した例を取り上げています。しかし研究者は、比較の基準となる数字や十分な評価条件が示されなければ、その改善が実際にどの程度意味のあるものなのか、外部から検証することは難しいと指摘しています。
研究が問題にしているのは、安全機能そのものの存在ではなく、
を外部から確認できる情報が十分なのか、という透明性の問題です。
352件を分析すると、SNS各社がどの種類のリスクについて多く発信しているのかにも偏りがありました。比較的多かったのは、子どもがどのようなコンテンツを見るかという「Content Exposure」と、誰とやり取りするかという「Interpersonal Communication」に関する対策です。
一方、子ども自身が投稿するコンテンツ、データへのアクセス、プラットフォームへのアクセスなどについては、相対的に発信が少ないことが確認されました。「有害な動画を見せない」「知らない大人から接触されにくくする」といった対策だけでなく、
こうした部分まで含めて考える必要がある、ということになります。
そこで2026年10月6日時点の各社公式情報も確認してみました。MetaのInstagramでは、日本でも13~17歳を対象とした「ティーンアカウント」が導入されています。さらに2026年5月からは、より年齢に適したコンテンツを表示するための新しい基準も日本で順次導入されています。18歳未満には新しい基準が自動適用され、保護者の許可なしには解除できない仕組みです。
一方で、ここにも今回の研究テーマにつながる興味深い点があります。
Metaは2026年6月、オンライン安全性を専門とするAlice(旧ActiveFence)へ評価を依頼し、Instagramのティーンアカウントを検証した結果も公表しています。評価では、設定が説明どおり機能していることなどが確認されたとしています。これは「安全機能を発表する」だけでなく、実際の動作を外部組織に評価させる段階へ進んでいる例と見ることができます。
TikTokも、保護者と10代の子どものアカウントを連携させる「ペアレンタルコントロール」を提供しています。保護者側から利用時間やプライバシーなど複数の設定を管理でき、TikTokは10代向けに50以上の機能や設定を適用していると説明しています。
YouTubeでは、13歳以上の子どものアカウントと保護者を「ファミリーセンター」でリンクして管理する機能が提供されています。ただし13歳以上の場合、保護者だけでなく子ども側からも管理機能を解除できる仕組みになっています。
Snapchatにも「ファミリーセンター」があり、保護者は会話の内容そのものを読むことなく、子どもが誰とつながっているのか、最近誰とやり取りしたのか、利用時間などを確認できます。
日本でも、安全機能そのものはかなり整備されてきています。
だからこそ次の段階として、「機能があるか」だけでなく、「初期設定で有効なのか」「どこまで保護できるのか」「子ども自身で解除できるのか」「効果を検証したデータがあるのか」まで見る必要がありそうです。
子どもにSNSを使わせる際、「ティーンアカウントだから安心」「ペアレンタルコントロールを設定したから大丈夫」と考えてしまいがちです。しかし今回の研究を踏まえると、安全機能を見るときには少なくとも、
① 公式告知内容
② 日本で実際に利用できるのか
③ 自動的に有効になるのか、それとも設定が必要なのか
④ 実際にリスクを減らしたことが検証されているのか
を考える必要があります。「機能が存在する」ことを知るだけでなく、子どもの実際のアカウントで有効になっているかを一緒に確認することが重要です。
この問題は家庭だけの話でもありません。学校や自治体では、子どものスマートフォン利用やSNSトラブルをテーマにした講座が行われることがあります。
その際、
「安全設定をONにしましょう」
だけで終わるのではなく、
「この設定は何を防げるのか」
「何は防げないのか」
「誰が設定を変更できるのか」
「困ったときはどうすればいいのか」
まで説明することが、これからは重要になるかもしれません。
SNS各社が青少年向けの安全機能を増やしていること自体は重要な変化です。今回の研究も、その取り組みを否定するものではありません。むしろ問いかけているのは、その次です。安全機能を発表するだけでなく、「誰に提供され、どう動き、どれだけ効果があったのか」まで確認できるようにする必要があるのではないか。
子どもが使うサービスだからこそ、
「安全機能があります」という言葉だけで安心するのではなく、「その安全は確認できるのか?」まで見る。
家庭にとっても、学校や自治体にとっても、これから必要になる視点ではないでしょうか。
ACM|Analyzing Social Media Claims regarding Youth Online Safety Features to Identify Problem Areas and Communication Gaps
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3788041
Meta|New 13+ Content Settings for Teen Accounts Expanding Globally on Instagram, Facebook, and Messenger
https://about.fb.com/news/2026/06/new-13-plus-content-settings-for-teen-accounts-expanding-globally-on-instagram-facebook-messenger/
YouTube ヘルプ|管理対象のお子様のアカウント(13歳以上)の設定
https://support.google.com/youtube/answer/15252891
YouTube ヘルプ|YouTubeの家族向けの機能を理解する
https://support.google.com/youtube/answer/10315420
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。