暮らしと仕事の「?」を調べてみた
(更新)
約281万人の研究から分かること
スマートフォン、ゲーム、動画、SNS、そして学校で使うタブレット。子どもが画面を見る時間が増えるなか、「スクリーン時間が長いと成績が下がる」「メンタルにも良くない」といった話を耳にすることがあります。
では、スマホやゲームの時間を減らせば、子どもの成績や心の状態は本当に良くなるのでしょうか。
2026年9月28日、医学誌「JAMA Pediatrics」に、子どものスクリーン利用と発達・メンタルヘルスについて、これまでの研究を大規模にまとめ直した論文が公開されました。
対象となったのは、23件のメタ解析に含まれる64か国、2,817,252人の18歳以下の子どもたちです。
約281万人という非常に大きな規模です。
今回は、この研究から実際に何が分かったのか、そして何までは言えないのかを確認してみます。

図:公開資料をもとに編集部作成(生成AIを使用)
「スマホやゲームの時間を減らせば、子どもの成績やメンタルは本当に良くなるの?」
最初に結論を言うと、今回の研究では、スクリーン利用の多さと、学業成績や言語能力、いくつかの心理・行動上の問題との間に「関連」が確認されました。
しかし、
「スクリーンを見ることが原因で成績が下がる」
「スクリーン時間を減らせばメンタルが改善する」
とまでは確認されていません。
ここが今回の研究を読むうえで重要なポイントです。
今回発表されたのは「アンブレラレビュー」と呼ばれる研究です。これまで行われてきた複数の研究を統合した「メタ解析」を、さらにまとめて検討しています。研究チームはEmbase、MEDLINE、PsycINFOという研究データベースを、開始時点から2025年11月25日まで検索。
18歳以下の子どもを対象とした23件のメタ解析を抽出し、重複する研究なども調整しながら再解析しました。
最終的に含まれたのは、
64か国、2,817,252人の子どもたち
のデータです。
研究では、スクリーンを使うことと、子どものさまざまな発達・心理面との関連を調べています。
スクリーン利用が多いほど、
・全体的な学業成績が低い
・言語能力が低い
・不安や抑うつなどを含む「内在化問題」が多い
・攻撃的行動などを含む「外在化問題」が多い
・感情面の問題が多い
・友人関係の問題が多い
という方向の関連が確認されました。
SNS利用についても、内在化問題との関連が確認されています。ただし、ここで注意したいのは、多くの関連は大きなものではないということです。たとえば、全体的な学業成績との相関係数は「r=−0.15」、言語能力は「r=−0.14」。一般的なスクリーン利用と内在化問題は「r=0.10」、SNS利用と内在化問題は「r=0.09」でした。
「関連が確認された」ことと、「スクリーン利用によって大きな問題が起きる」ことは同じではありません。
もう一つ重要なのが、明確な関連が確認されなかった項目もあることです。
今回の分析では、
・算数
・科学
・読解
・実行機能
・向社会性
について、スクリーン利用との統計的に明確な関連は確認されませんでした。「全体的な学業成績」とは関連が見られた一方で、算数・科学・読解を個別に見ると明確な関連が確認されなかったという点も、この研究を理解するうえで大切です。
ここは慎重に考える必要があります。
今回まとめられた研究の多くは、ある時点でのスクリーン利用と子どもの状態を調べる「横断研究」です。
たとえば、
「スクリーンを長時間使っている子どもほど、不安や抑うつなどの問題が多かった」
という結果が出たとしても、
スクリーン利用が増えたために問題が起きたのか??
もともと何らかの困難を抱えている子どもほどスクリーンを利用する時間が長くなったのか??
第三の要因が両方に影響している可能性もあります。研究結果についてコメントした英ラフバラー大学のEsther van Sluijs教授も、今回のデータの多くが横断研究から来ているため、「スクリーン利用の増加が、より悪い結果を引き起こすのか」については十分に判断できないと指摘しています。
「スクリーン時間を減らせば成績やメンタルが改善する」
と今回の研究から結論付けることはできません。
もう一つ難しいのが、「スクリーン」という言葉の幅広さです。
同じ1時間でも、していることはまったく違います。今回の研究では、スクリーンの種類や子どもの年齢などによって一部の関連が異なることも確認されています。一方、外部の研究者からは、SNSやゲームなど特定の使い方について確かな結論を出すには、まだデータが十分ではないとの指摘も出ています。
今回の研究から、
「1日2時間までなら安全」
「3時間を超えたら危険」
といった境界線が示されたわけでもありません。
約281万人という数字だけを見ると、非常に強い結論が出た研究のようにも感じられます。しかし、人数が多いことと、「何時間なら安全か」「減らせば改善するか」まで分かることは別です。今回確認されたのは、あくまでスクリーン利用と複数の発達・心理的な指標との統計的な関連です。
東村山・小平・東大和で暮らす家庭にとっても、ここは身近な問題です。現在の学校では、GIGAスクール構想によって1人1台のICT端末が整備され、タブレットやパソコンを授業や家庭学習で使うことが日常になっています。
文部科学省も、ICT端末を単に使わない方向ではなく、教育に活用しながら健康面にも配慮する考え方を示しています。
たとえば、端末を使用するときには、
・良い姿勢を保つ
・画面から目を離して休憩する
・長時間続けて画面を見ない
・家庭でも利用時間などについて話し合う
といった対応を示しています。
したがって、今回の研究を理由に、
「学校のタブレットも含めて、とにかく画面を見る時間を減らした方がいい」
と考えるのは早そうです。
今回の研究自体も、学習、ゲーム、SNS、動画などすべてのスクリーン利用について、それぞれ同じ影響があると証明したものではありません。
家庭では「今日はスマホを何時間使った?」という時間の話になりがちです。もちろん、長時間利用への注意は必要です。一方、今回の研究を確認すると、
といった「使い方」も含めて考える必要がありそうです。
研究チーム自身も、今回の結果について、今後の子どものスクリーン利用に関するガイドラインや政策を検討するための材料になり得るとしています。
2026年9月28日にJAMA Pediatricsで公開された研究では、23件のメタ解析、64か国、2,817,252人の18歳以下の子どものデータが検討されました。
スクリーン利用の多さと、全体的な学業成績や言語能力の低さ、不安・抑うつなどを含む内在化問題、外在化問題、感情面・友人関係の問題との間には関連が確認されました。
一方、算数、科学、読解、実行機能などでは統計的に明確な関連は確認されませんでした。
今回の研究から、
「スクリーン利用が原因で成績が下がる」
「スクリーン利用が原因でメンタルの問題が起こる」
「スクリーン時間を減らせば成績やメンタルが改善する」
とは断定できません。
また、「1日○時間を超えたら危険」といった明確な境界線を示した研究でもありません。
SNS、ゲーム、動画、学習など、利用目的ごとの影響についても、まだ十分に分かっていない部分があります。
JAMA Pediatrics(2026年9月28日)
“Screen Use and Child and Adolescent Development and Mental Health Outcomes: A Quantitative Umbrella Review”
Al-Jbouri E, Nivison MD, Neville RD, et al.
DOI: 10.1001/jamapediatrics.2026.4339
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/article-abstract/2854067
Science Media Centre(2026年9月28日)
“expert reaction to umbrella review of studies looking at screen use and child and adolescent development”
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。